むそう塾生のAさんからメールが届きました。
Aさんは現在大学生ですが、途中でむそう塾の愛クラスを受講して、玄米ご飯を炊けるようになりました。
食べ方の詳しい指導は、コース受講生でないためしていませんが、大事なところはその都度メールでお返事をしていました。
彼女なりに咀嚼して、今はこの段階に至ったようです。
<Aさんからのメール>
2017年5月◯日、わたしは20歳になりました。
そしてようやく、7年間の食への偏見を治し食事を楽しもうと固く決意しました。
これまでの“食”への向き合い方を振り返り、手放すきっかけにしようと思います。
<幼少期>
わたしは小さい頃食わず嫌いで好き嫌いが激しく、当時特に好きで記憶しているものはトマト・タマネギ・ゆで卵・鰹・サツマイモです。塩が大好きで、ゆで卵やサツマイモの天ぷらにたくさんつけて食べていました。
<小学校低学年~中学年>
嫌いなものが減り、何でも食べるようになりました。家では祖母や母が作ってくれた料理を、お腹がいっぱいになるまで食べていました。完食すると「すごい!」と褒めてもらえたのが嬉しかったです。トンカツ1枚も、ファミレスのピザ1枚も食べきっていました。パンもお菓子も好きでした。身長はぐんぐん成長しました。周りの子はまだ身長が低く細身だったことに比べて、わたしは身長が高く少し太っていました。小学4年生のときに、友達だった子から見た目のことで何回か悪口を言われてから、少しずつ体形を気にするようになりました。
<小学校高学年~中学生>
体育で逆立ちの補助をしてもらった時に「脚が重い」、偶然服のボタンがとれてしまった時に「太っているから」と男子から言われたこと、ファッションに興味を持ち出しモデルさんや周りの細い子をうらやましく思ったことなどから、小学6年生の冬にカロリー制限のダイエットを始めました。何も知識がなく、とりあえずカロリーを抑えれば痩せると考えていたため、まず間食と夜食をやめ、サラダにはノンオイルドレッシング、油は拭き取る、量を減らす、ケーキは朝食に食べる…といったことを実践しました。寝る前に空腹になったように記憶しています。体重は徐々に落ち、3か月で2キロ減りました。
春休みのある日、わたしは“食べて痩せる!”という内容の本を見つけ購入しました。色々な食材や調味料、栄養のこと…未知の世界にとてもわくわくしました。それから少しずつ、栄養バランスを考えて食事するようになりました。苦手だった煮物もおいしいと感じるようになりました。一方、「小麦製品は体を冷やし、代謝を悪くする」「添加物は体に悪い」「乳製品は日本人に合っていない」から「控えるように」と書いてあったにも関わらず、わたしはそういった食品を食べることに不安を覚え、避けるようになりました。特に、小麦粉製品に対してはかなりの拒否反応を示しました。大好きだった麺類も、お菓子も、パンも、家族で外食をしたり誕生日でケーキを買ったりしない限り、食べなくなりました。「これは体に悪い」という思いが常に片隅に居座ったまま、食べていました。
その思いはどんどん強まっていきました。給食ではパンやシチュー、揚げ物は必ず残しました。メニューによっては、ほんの少しの具だけしか食べない時もありました。痩せたいという気持ちもあったため、ご飯を減らすようにもなりました。お肉やお魚、卵、大豆製品といったタンパク質豊富なものや野菜は好んで食べました。家族には本に書いてあることを話し、玄米を炊いてもらったり、油をオリーブオイルに変えてもらったりしましたが、小麦粉のことや電子レンジのことは対立しました。母とは何回も口論になりました。
体調面に関しては、良いことがありました。花粉症の症状が軽くなりましたし、風邪をひきにくくなり、熱が出ることはありませんでした。しかし、中学校入学時から急な環境の変化やダイエットの影響で生理が止まってそのまま、幼いころからあった便秘も続いていました。産婦人科で治療し一度薬で生理が来ましたが、部活や塾で時間が取れず、また自然に生理が来てほしいという思いがあったため病院に行かなくなりました。
<高校生>
給食からお弁当になり、母が毎日作ってくれました。冷凍食品はなく、夕食のおかずやわたしの好きなものをつめてくれました。朝、昼、夜とちゃんと3食食べていましたが、高校2年生の秋ごろから朝食に固形物を食べなくなりました。朝はあまり食べないほうがいいという情報をすでに知っていたので控えてはいましたが、母に反対されると思いやっていませんでした。しかしある本で、朝食に黒糖入りの生姜紅茶かニンジンリンゴジュースがいいと書いてあるのを読んでやってみることにしました。母には反対されましたが、わたしが「生理や便秘が治るかも」と言って聞きませんでした。少食についても書かれてあったため、時々昼食を抜く断食をしました。
食べるものに関しては、特に大豆製品を食べるようになりました。納豆、豆乳、大豆水煮、豆腐が大好きで毎日のように食べました。甘いものも好きで、黒糖や蜂蜜は体に良いと思って紅茶や豆乳にたくさん入れていました。小麦粉への拒絶反応はますます強くなり、夕食では揚げ物の衣もケーキのスポンジも捨てるようになりました。いつしか、食べ物を口に入れ飲み込まずに捨てるという“チューイング”をするようにもなりました。その行為をしたのは主にケーキでした。ケーキは自分の分があったため残すことができず、そのまま捨てると見つかってしまうからです。「味を楽しむことができて、しかもお腹にたまらない。なんていい方法なのだろう!結局体から排出されるのだから、飲み込んでも飲み込まなくても一緒。『作ったものを美味しいと思ってほしい』という、作った人の思いはちゃんと感じている」と思っていました。
この時には、痩せたいという気持ちはほとんどありませんでした。体に良いものと悪いものを自分が得た情報で判断し、食べていました。食べていいと思えるものはもちろん「美味しい」と思っていましたが、それ以上に安心感があり、いくらでも食べていました。
<大学生>
一人暮らしを始め、食べるものも自由になりました。調味料にこだわり、醤油は小麦を使用していないものを使いました。「少食は体に良いから、空腹にならないと嫌だから」と、昼食はほんの少しの野菜か高野豆腐1つと小さなおにぎりだけ、あるいは乳児用の野菜ジュースだけ、部活がある日の夕食は納豆だけ、豆乳と味噌汁だけなどしか食べませんでした。食費のこともとても気にしていました。時々断食もしました。
5月に健康診断をした時点で、2か月ほどで体重が5㎏ほど落ちていましたが、初めて40㎏をきったのが嬉しくて、あまり気にしませんでした。朝の起床や自転車で坂道を上ることがつらく感じる時もありましたが、起こす人がいなくなったから、夜更かししているから、運動しなくなったから、と食事に原因があるとは考えませんでした。
夏休みに実家に帰省した時「痩せた!」と家族から驚かれました。3か月ぶりに体重を量ってみると、なんと33kgでした。信じられませんでした。もっと体重を増やさなければという思いよりも、たくさん食べても罪悪感を持たなくていいという思いや、色々な人に気にかけてもらえることが嬉しいという思いのほうが強かったです。そして、「こんなに体重が減っても普通に生きていられる」と、焦りをあまり感じていませんでした。
そんな中、わたしはマクロビオティックについて書かれた本に出会いました。以前から、肉や魚、卵などの動物性食品はあまり食べないほうが体にいいと何かの本で読んだことがあったため、実際はどうなのだろうと疑問に思っていました。その本には、「肉や卵は食べるな!」という勢いで動物性食品のことが書かれており、菜食が良いことや陰性なものは食べないほうがいいことなどが書かれてありました。再びわたしは、便秘や無月経、冷え性が改善するかもしれないと期待して、夏休みが明けて一人暮らしを再開してから、少しずつ菜食にしていきました。もともと豆が好きでしたし、大豆食品でいわゆるもどき料理を作ることも楽しくて、苦痛ではありませんでした。菜食は体にいい、スポーツ選手にも菜食で活躍している人がいる。そういう情報はネットにいくつもありましたが、一方でタンパク質やその他の栄養のことを考えるとどうしても本当に菜食でいいのか?肉や魚や卵を食べてはいけないのか?と疑問に思うようになり、毎日のようにネットで調べていました。
菜食が良い?動物性食品を食べてもいい?何を食べたらいいのかわからない!と混乱して、誰かに相談したくてたまりませんでした。そんな時美風さんのブログに出会い、お問い合わせフォームがあるのを見つけ、藁にも縋る思いで美風さんに助けを求めました。10月30日のことでした。今までの食生活、自分の思い、悩み…思いつく限り細かく書きました。的確なアドバイスをいただきたかったから、というのはもちろんですが、今まで親にも友達にも誰にも言えなかった食に対する悩みを初めて聞いていただけることがただ嬉しくて、希望を感じながら相談メールを書きました。翌日、美風さんからお返事をいただきました。ようやく、自分の体が健康ではないことを自覚して焦りを感じました。その日から菜食をやめ、最初は抵抗感があったものの、毎日魚を食べるようになりました。肉や卵にはまだ抵抗感があって食べませんでした。今年は食べられないと思っていた大好きな秋刀魚を旬の時期に食べることができて嬉しかったことを、今でもよく覚えています。数日後、菜食を始めた頃から発症した足のむくみが少しずつ治っていきました。
そして12月10日、愛クラスを受講しました。心もお腹も幸せで満たされて、充実した1日はこれまでにありませんでした。玄米ご飯を炊いて食べるようになってから、体が元気になっていくのを感じました。体育の授業でも少しずつ走ることが楽になり、当時入っていた吹奏楽部での演奏も良くなってきて、自信がついていきました。食の力を強く実感する毎日でした。元気になりたい、冷え性も無月経も便秘も治したいという思いだけでなく、みんなと食事を楽しみたいという思いも強くなっていきました。「何を食べるかではなく、どんな気持ちで食べるかのほうが大事」と、美風さんからメッセージをいただきました。
しかし、わたしは拒食脳を手放すことができませんでした。年末に帰省した時、小麦粉に加え砂糖まで拒むようになったわたしに、母はわたしの体を強くゆすり、涙を流しながら大きな声で気持ちを吐き出しました。今までこんなにも母を苦しめていたのだと知り、申し訳なさでいっぱいになりました。「普通の食事でいい」「何を食べてもいい」と母にも美風さんにも言われました。それでも「小麦粉や砂糖などは害があるから食べない」という考えを変えることができず、「何を食べてもいいってどういうこと?」と思っていました。
GW中に帰省した時も、まだ続いていました。母ともまた喧嘩してしまい、一緒にいることも顔を合わせることも気まずくなってしまいました。再び美風さんに相談してそのお返事をいただいてから、今までの美風さんとのメールのやり取りやブログ記事をもう一度読み返しました。美風さんは何度も同じようなメッセージを、わたしに伝えてくださっていました。それなのに、わたしは全く分かっていなかったのです。そして「変わりたい、みんなと楽しく食事をしたい」という12月の自分の思いも忘れていたことに気が付き、年末からの自分勝手な行動が美風さんや母、家族にどれだけ失礼だったのかを強く思い知り、反省しました。「体に負担がかかるものを食べたからといって、死ぬわけではない」「食べた後にどう対応するかで変わる」「”何を食べるかではなく、どんな気持ちで食べるかのほうが大事”」と、ようやく心から思えるようになりました。母にもそのことを伝え、夏に帰省した時は美味しいものを食べよう、夕食を一緒に作ろうと約束しました。
今は肉も魚も卵も抵抗感なくいただいています。しかし、「体に悪い」と食べようとしなかったもの(特に小麦粉、砂糖、乳製品、添加物が入ったもの)を普段口にすることはないため、まだ正直それらを目の前にして恐怖心を抱かずに食べられるか、不安に思います。しかし、それよりも「”美味しい”をみんなと共有して一緒に食事を楽しみたい」という思いを強く持って、洗脳から脱出していきます。
最近は低血圧のわりに朝の目覚めはよく、急に立ち上がっても立ち眩みは起きません。体重も少しずつ増えてきました。階段を上るのも早歩きをするのも楽になりました。元気でいられることに喜びを感じる毎日です。
わたしには、一つ絶対に叶えたい夢があります。それは『お母さんになる』ことです。中学生から止まったままの生理を復活させ、赤ちゃんが授かる体を作るためにも、これからもしっかり食べて元気に活動し、あらゆるものに感謝しながら笑顔で過ごしていこうと思います。
あの日本を読んでいなかったら、わたしは“普通の女の子”として何でも食べていたことでしょう。母が深く悩むこともなかったでしょう。しかし、本を読んだことで食に対して興味を持ち、多くのことを知ることができました。むそう塾という素敵なお料理教室と、中川さんや美風さん、多くのむそう塾生さんと出会うことができました。だから決してこの過去を無かったことにせず、ちゃんと受け入れてこれからも生きていこうと思います。命を救ってくださり、変わるきっかけをくださったむそう塾に、心から感謝申し上げます。
* * *
<マクロ美風より>
メールをありがとうございました。
いつもあなたのことは気になっていますが、まずはお母様との和解が一番と考えていたので、余計なことは口出ししないようにしていました。
あなたの文章を読んで一番大事なことを書いておきますので、今後の参考になさってください。
>今は肉も魚も卵も抵抗感なくいただいています。しかし、「体に悪い」と食べようとしなかったもの(特に小麦粉、砂糖、乳製品、添加物が入ったもの)を普段口にすることはないため、まだ正直それらを目の前にして恐怖心を抱かずに食べられるか、不安に思います。
小麦粉、砂糖、乳製品、添加物が入ったものに恐怖心を抱かれるようですが、今のあなたはむしろそれらがなくてもお元気に行動出来ているなら、それで良いのではないでしょうか?
無理に食べようとしなくても、食べたいと思える時が来たら召し上がればよいし、今は食べたくないのなら、食べなくてもいいだけではないでしょうかね。
将来お子さんを産める体になりたいのなら、小麦粉、砂糖、乳製品、添加物が入ったものは摂っていない方がむしろ都合が良かったりします。
問題は、病的なまでにそれらを避けようとして、人間関係にヒビが入ってしまうことです。
今の時点で何事も完璧にしようとするのではなく、自然にあなたの体が変化してきたら、頭ではなく体が食べ物を選んでくれるようになりますから、その時の体の声に任せればよいですね。
人の体も心も変わります。
それは生きているからです。
変わるということは陰陽に変化が起きるということでもあります。
ですから、その陰陽の変化に寄り添いながら生きることを説いているのがマクロビオティックの考え方です。
宇宙という環境の中で、あなたは刻々と変化しているのですから、現時点ですべてを決めつけようとせず、もっとおおらかに物事に接するようにしましょう。
人間の細胞はすぐ変われるものと、年数が必要なものがあります。
その変化を楽しみに待ちながら、悔いのない人生を送ってください。
マクロビオティックではなく、ミクロビオティックにならないようにね(^_-)-☆
(出汁巻き玉子 料理:京料理人 中川善博 マクロビオティック京料理教室 むそう塾)
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