私が結婚した当初は、夫と一緒にお食事をするのが当たり前と思っていたので、朝晩は一緒に食べるようにしていました。
しかし夕食に関しては、夫の仕事の都合で遅くなることもあるので、時々お腹をすかせて遅くまで待っていました。
そんなある時、夫はこんなことを言うのです。
「家で待たれていると思うと落ち着いて仕事が出来ないから、待たないで先に食べてていいよ」と。
ずっと待っていた者の立場としては複雑な心境でしたが、独身時代に男性たちと一緒に仕事をしていた私としては、夫の気持ちも分かるので遅くなりそうなときには先に食べるようにしていました。
そして、遅く帰宅した夫にごはんを作って、私はお茶を飲みながら話をする感じでした。
そうこうしているうちに子供が産まれたので、それからは子供中心のお食事時間になりました。
しかしお父さんっ子の息子は2〜4歳のころ、お父さんと一緒にごはんを食べるんだと言って、父親が帰ってくる道路まで迎えに行くと言って聞きません。
仕方なく父親の車が見えやすい交差点で息子と一緒に夫を待つ日々でした。
遠くから来る父親の車を目ざとく見つけて喜ぶ息子のために、夫は残業したいのを止めて夕食に間に合うように帰宅して、朝早く出かけるようになりました。
しかし、どうしても夜のうちに片づけて安心してから眠りにつきたい仕事もあるので、夕食のために帰宅してからもう一度仕事に行くこともありました。
一日に2往復も職場と自宅を行き来するのは時間的にも肉体的にも負担なので、そんな生活を解消すべく、私は思い切って夫に職住接近を提案して、さっさとマンションを購入したのでした。
夫の職場と新しい住まいは交差点を挟んで目の前なので、お昼ごはんもスタスタと歩いて戻って来れます。
通勤時間1分の暮らしは快適で、健康と家族団らんをもたらしてくれました。
多くのサラリーマンが通勤電車に揺られながら遠くまで通う今の時代は、家族とのお食事は週末以外なかなか思うように行かないかもしれません。
でも、家族とは一緒に食事をしながら絆を深めるものだと思うので、1食でも多くご家族でお食事が出来たらいいなと思います。
ところで、夜遅くお食事を取ってすぐ眠るのは健康的ではありません。
しかしお仕事上どうしてもそうなってしまう場合は、お子さんがいないご家庭ではせめて奥様だけは健康的な時間帯に食べておきましょう。
それは奥様を病気にさせないためでもあります。
奥様がいつも健康でいてくれてこそ、ご主人様も安心して働きに行けるのですから。
(にゅうめん 料理:京料理人 中川善博)