私が初めて玄米ご飯を口にしたのは、もう40年ほど前のことです。
当時東京で弁護士の私設秘書をしていて、その仕事で会社の設立手続きを進めるため、西荻窪の某自然食品店に出向いた時のことでした。
しかし、その時の玄米ご飯は特別美味しいという印象は残らず、私の中ではそのままになっていました。
私は一人暮らしを始めた高校生の時から、外で食べて美味しいと思ったものは、家に帰るとそのお料理を再現しようとすることが日常だったのですが、その玄米ご飯を再現しようとは思いませんでした。
年月が経って、ある人から白米に玄米を混ぜて炊いたご飯を試食用にいただいて、私も教わったとおりに炊いてみたのですが、どうしても玄米の粒感が白米の美味しさを殺してしまっていることが気になりました。
方法を変えて3回炊いてみたのですが、素直に美味しいと思える炊き上がりにならなかったので、やはりこれは白米のみ、玄米のみ炊く方が良いとの結論に行き着き、本の最後のページに小さく出ていた東京のリマ・クッキングスクールに通い始めたのでした。
そこで習った炊き方は圧力鍋で炊く方法で、いわゆるもっちり感があって美味しく感じました。
白米と一緒に炊いた玄米の粒感はなく、「ああ、やっぱり混ぜない方がいい」と思いました。
それはそうです。白米と玄米では硬さが違うのですから、同じ料理方法にしてしまうのは乱暴すぎます。
習い始めた当初、先生が「夏になると圧力鍋で炊いたら重く感じるので、その時には土鍋で炊いてください」と言われましたが、4月末から玄米を食べ始めた私は夏が来ても重く感じませんでした。
月日が経って飽きたなと思う時には小豆を入れて、お赤飯みたいと喜んで食べていました。
しかし、さすがに小豆を入れても、麦を混ぜても、土鍋で炊いても、玄米を美味しく感じなくなる日がやってきました。
玄米を食べてから体調は格段に良くなっていたので、玄米は食べたいけれどこのままでは美味しくないと炊き方を模索していた時に、京都でお店をされている中川さんの玄米ご飯に出会ったのです。
中川さんの炊く玄米ご飯は、炊き上がりの色が白っぽいので、白米を少し混ぜているのかしらと思ったほどです(笑)
でも、白米と玄米を混ぜた味は知っているので、口に運ぶと玄米100%であることはすぐに納得しました。
ふわっとしていて食べやすいなあと感じました。
しかしながら、定食のお料理を全部いただいた後の玄米ご飯の感想は、残念ながらおかずの美味しさに気を奪われていて、あまり残っていないのです_| ̄|○
ただ、もう一度食べてみたいと思いました。
* * *
それから年月が経って今なら胸を張って言えます。
玄米ご飯が自己主張しすぎると飽きると。
お食事は全体でハーモニーを奏でるオーケストラと同じなので、何か一つのお味が突出してしまうと全体のバランスがかけてしまいます。
ですから、食べ始めから食べ終わりまでを計算して、お箸を置いたときに美味しかった印象だけが残れば良いのです。
むそう塾の愛クラスを受講されると玄米投稿がありますが、その時に陽性タイプの人なのにもっちりした炊き上がりを求めている人がいました。
もっちりした炊き上がりというのは、玄米ご飯の個性が強い(陽性)ので、全体のバランスとしてはさらっとした炊き上がり(中庸)の方が長く食べ続けられます。
ですから、陽性タイプであればあるほど、さらっとした炊き上がりにした方が心身両面で快調に向かいます。
よく、やわらかい玄米ご飯を食べるために水加減を増やしたり、浸水時間を長くする人がいますが、それだけで玄米ご飯は美味しくなりません。
玄米ご飯を美味しくする要素はそれだけではないのです。
いかにして玄米の皮感をなくすか。
玄米の美味しさはここにかかっていますし、ここを克服して初めて体に良い玄米ご飯といえるのです。
健康のために玄米ご飯を食べていても、その玄米ご飯がもとで体調を崩す人が多い現実があります。
玄米ご飯は間違いなく白米より炊き方が難しいです。
ですから、確実に皮感をなくす炊き方で、体の負担にならない食べ方をしましょう。
真の健康を手にするために。
先日中川さんがわざわざ炊いてくれた玄米ご飯が、より一層美味しく感じられました。
炊き方を研究されているのか、お鍋のせいなのか分かりませんが、印象に残る美味しさでした。
ああ、写真を撮っておけば良かった。。。
* * *
(中川式玄米ご飯 料理:京料理人 中川善博 マクロビオティック京料理教室 むそう塾)
こういうふうに炊けた玄米ご飯だからこそ、下の写真のように美味しい玄米のちらし寿司が出来上がります。
玄米のいなり寿司はやみつきになる美味しさで、私は「あとひき稲荷」と呼んでいます(^^)
ここでは一皿の上で味のハーモニーを実現しています。
(参考記事はこちら。 2015.2.16)
お皿がいくつあっても、一皿であっても、全体としてどれかが自己主張しすぎないお料理。
それが本当のマクロビオティック料理だと思います。
なぜなら、そこではちゃんと陰陽バランスが取れているからです。
そして、玄米ご飯の炊き上がりで一番大事なこと。
それは一生食べ続けていたいと思える軽さがあるかどうかです。
体調によってコロコロと炊き方を変えるのは、完成した炊き方とはいえません。
だって、白米はそんなに炊き方を変えないでしょ?
だからこそ主食たり得ているのです。
変えていいのは季節によって少ーし微調節すること。このくらいです。
そうそう、玄米のいなり寿司は玄米だと知らないで食べてしまう美味しさです。
お寿司はご飯が主役です。
(中川式玄米ちらし寿司 料理:京料理人 中川善博 マクロビオティック京料理教室 むそう塾)
(中川式玄米稲荷寿司 料理:京料理人 中川善博 マクロビオティック京料理教室 むそう塾)
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