あまり聞き慣れない言葉でしょうが、「三厭五葷」(さんえんごくん)というのが精進料理の世界にはあります。
つまり、「三厭」は肉類・鳥類・魚類を指し、「五葷」はネギ・玉ねぎ・ニンニク・ラッキョウ・ニラを指します。
先日のお弁当投稿でもこの言葉が登場しましたが、確かに元々の中川さんのお料理を見ていると、それらが登場しません。
しかし、私がそれらを入れるようにお願いして、むそう塾のメニューが陰陽バランスで組み立てられています。
マクロビオティックの陰陽を知っている人なら誰でもお気づきでしょうが、三厭(陽性)を取らなければ五葷(陰性)も不要なわけです。
ですから、修行僧のように一切の動物性を排除したお食事をしている人なら五葷を摂らない方が陰陽バランスが良くなりますが、現代人の多くは五葷の力を借りた方が良い場合があります。
この五葷の力は相当なもので、マクロビオティックを嫌っている人でも陰陽の視点から考えて納得できると思います。
これは食べ物にはそれぞれ陰陽の働きがあるという現実を素直に受け止めればよいのであって、それ以上難しく考えなくても良いのです。
先日も五葷の力に泣いた人がおりました。
糠床にニンニクを数個入れて、糠床をダメにしてしまったのです。
糠漬け講座の時に、あれほど漬けて良いものと悪いものをお教えしたのですが、すっかり忘れてしまっていたようです。
この方はそれまでの食習慣からいって、ニンニクを身近な食材としすぎていたようですね。
しかし、ニンニクの殺菌力は凄いのです。
だから毒消しにも使われるわけですが、糠床の乳酸菌もあっけなく消されてしまったのでした。
この1例だけで考えても、食材の陰陽バランスを考えることは、私たちの体を健康に導くためにとても重要な考え方だと理解できるでしょう。
往々にして五葷のお好きな人は生まれつき体力のある人が多いですね。(陽性)
そうでない場合は、お肉がお好きな人です。
そして、そんな人はおビールもお好きです。
日本酒の重さ(陽性)より、おビールの軽さ(陰性)が心地よく感じるからでしょう。
日本酒より発泡酒の方が好まれる背景には、こんなお肉好きな現代人の食の背景がありますね。
また、五葷に入っている食材はいずれもスタミナのつくものばかりです。
修行僧にとってはスタミナがつくのは煩悩が増えて困りますから、そんなこともあって精神修養のためには避けるべきものとされたのでしょうが、マクロビオティックの陰陽バランスの観点からは、上手に毒消しとして利用してほしいなと思います。
なお、格のあるお料理には五葷に入るものは避けましょう。
一気にお味が下品になります。
存在感が強すぎるんですね。
全体のバランスを壊さない食材とお料理方法が、心地良いお味につながります。
そしてまた、そんなお料理が精神的にも落ち着くのです。
中川ワールドにはそんなお料理がいっぱいあります。
(京都 無鄰菴にて 2015.9.1撮影)