12月1日号、正露丸の記事に驚きの声をたくさんいただきました。今回は、その成分について薬剤師に聞きました。
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正露丸の主成分はクレオソートで防腐作用があるとして、日露戦争のころから下痢止めなどに使われてきた古い薬です。有効性や危険性については検証のないまま、現在に至っています。
クレオソートとは、消毒薬として知られているクレゾールをはじめとするフェノール系化合物の混合物です。フェノール系化合物は細胞のタンパク質を変質さ せて細胞を障害する作用をもっています。クレオソートは「日本薬局方」にも収載されていますが、その「本質」の項には「歯科用消毒薬 殺菌・防腐薬」(第 十四改正)と記載されています。
クレオソートの危険性はその本質からも予測されますが、常用してもよい量と害になる量(中毒量)との差が少ないという問題があります。効かないからと いって連続して服用すれば、即中毒量に達することになります。実際に腹部不快で正露丸を7日間で250個(常用量の四倍)服用し、腸管壊死を起こして切除 術を受けた症例が報告されています。
また、正露丸の添付文書には、「本剤が誤って皮膚に付着した場合は、せっけん及び湯を使ってよく洗って下さい」と書いてあります。なぜ、このような毒性を持つ物質が内服用の一般用医薬品として販売され続けているのでしょうか。
医薬品の承認基準については、薬害スモン訴訟を契機に一九七九年に薬事法が改正され、承認規定の整備、再評価制度が法制化されました。その後一般用医薬 品は薬効ごとに承認基準が制定され、その基準に収載されている成分は、品質に関する試験のみで販売が許可されます。しかし、この承認基準は、クレオソート のように、古くから経験的に使用されてきた薬については、厳密な評価なしに基準化されており、その後、問題点が指摘されても再評価が行われていないという 実状があるからです。
今、セルフメディケーションの推進を理由に、一般用医薬品の承認審査の規制緩和をすすめる動きがあります。承認審査の合理化ではなく、まず、効かない薬や危険な薬の再評価を実施することこそ急務です。
医療用・一般用を問わず、薬は私たちの体にとっては「毒物」であり、その毒性を「効果」として逆利用しているのです。使い方や使用量次第で、常に「毒物」として作用することはどんな薬にもいえることです。
(民医連新聞 第1298号 2003年1月21日)
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