包茎はダメ、じゃない NHKのWEB特集より

NHKのWEB特集で良い記事がありました。
しっかり調べて書かれた素晴らしい記事です。
悩んでいる男性が多いと思いますので、転載させていただきますが、元記事の方が読みやすいので、ぜひそちらからお読みください。
「包茎はダメ、じゃない」 2019.12.16 16時21分配信

 
 

 
 

包茎はダメ、じゃない

中学生になるころからでしょうか、男性が悩む“包茎”。
ふだんから包皮に覆われていないことが、“正しい状態”と考え、そうでないことで悩むのです。
“なぜ悩むのか”
それをまじめに分析した研究結果が発表されました。
そしてこの悩み、すでに、明治時代にはあって、その後もえんえんと続いているようでした。
(ネットワーク報道部記者 高橋大地)

 
 

思春期の悩み


思春期の性に関する悩みを受け付ける、日本家族計画協会の相談電話があります。
昨年度、受けた相談はおよそ1000件ありました。
相談内容の順位です。

1位:自慰について
2位:包茎について
3位:性器について

2番目に多いのが包茎でした。
「モテない」「早漏になる」
インターネットや雑誌で見たそんな文句に悩まされた人たちから、電話が寄せられるといいいます。


現実と理想


包茎とは、男性器の亀頭部分が包皮で覆われている状態のこと。
大きく分けると2種類あります。

包皮を引っ張っても亀頭部分が露出しないのが「真性包茎」。
包皮を引っ張れば露出するのが「仮性包茎」です。

どのくらいの人がそうした状態で、どう受け止めているのか、その調査をした専門家がいます。

東海大学 小貫大輔教授

性の健康と権利について研究している東海大学の小貫大輔教授です。大阪府立大学の東優子教授と共同で、ことしの夏、インターネット上で調査しました。
およそ4800人が回答し、ことし10月「現代性教育研究ジャーナル」で結果の一部が公表されました。

自身のふだんの見た目について、1~4のどれに当てはまるか答えてもらいました。

画1 亀頭がすべて覆われている:約43%
画2 亀頭の一部が包皮で覆われている:約30%
画3 亀頭がすべて露出していて包皮で覆われていない:約22%
画4 手術によって包皮が切除されている:約4%
(いずれもふだんの状態)

「亀頭がすべて覆われている」「亀頭の一部が包皮で覆われている」を合わせて73%。つまり日本人の多くが包茎という結果です。
「真性」か「仮性」かは聞いていないのですが、「真性」の割合は数%程度とも言われているので、およそ70%が「仮性包茎」と考えてもよさそうです。
一方、「理想と思う男性器の外見はどれか」という質問では「亀頭がすべて露出していて包皮で覆われていない」という回答が約74%とだんとつです。

「多くの人は包茎なのに、そうでない状態を理想と考えている人が多い」
こんなところに相談が多い背景がある気がします。

 
 

“見えむき” “手を加える”


アンケートでは「亀頭がすべて覆われている」あるいは「亀頭の一部が包皮で覆われている」という、つまり包茎の人たちに「公衆浴場に入るときに、包皮をむいてから入るか」とも尋ねています。

結果は「いつもむいてから入る」「ときどきむいてから入る」という回答が合わせて約55%でした。


小貫教授
「理想的だと考える状態にするため、半数くらいが、わざわざ“むいて”いるんです。『見えむき』とも呼ばれているのですが、想像したより多いという印象です」

また、「包皮で覆われていない」という人のうち66%は、むけるようになるために「意図的に手を加えた」と回答しています。
自然にではなく、努力してむいているという傾向です。

小貫教授
「むけてることがよいことだという認識によって、劣等感を持ったり、傷ついたりしている。少し滑稽だとも、悲しいことだとも私は思うんです」


医学的には問題なし


医学的には、問題があるのでしょうか。
「『仮性包茎』の状態であっても、全く問題はありません」
神戸市にある泌尿器科、石川クリニックの石川英二院長に聞くとそう話してくれました。

石川クリニック 石川英二院長

石川院長
「ただ、清潔にしたほうがよいので、洗ってください。せっけんをつけて洗いすぎると、脂分がなくなったりはれたりすることもあるので、水で洗い流すような感じがいいです」

ただこうした説明を患者にしても…

石川院長
「仮性包茎であることを心配した男性がよく相談に来ます。問題ないよと説明しますが、納得して帰っていく方もいれば何度も来たりする方もいる。根深い問題だと思っています」


明治時代から


小貫教授はこうした傾向は、明治時代の文献にもあると話していました。

明治32年、人類学者の足立文太郎が「東京人類學會雑誌」に発表した論文で、東京大学の「考古学研究室」に雑誌が保管されていることがわかり、訪ねてみました。

書庫にうずたかく積まれた人類学や考古学に関する論文の数々。見つけた雑誌を1ページずつめくっていくと、目当ての論文が見つかりました。

東京人類學會雑誌

タイトルは「本邦人陰茎ノ包皮ニ就テ」。
足立は、当時の兵士の身体検査の時に、包皮がどうなっているか調べることを軍医に依頼。広島歩兵連隊の485人を調査していました。
その結果は…

▽「平時亀頭の全部或一部包皮を以て覆はるるもの」:141人
▽「平時亀頭の全部を露出するもの」:344人

包茎は3割程度で、そうでない人が圧倒的に多いということになりますが、分析には続きがあります。

論文「本邦人陰茎ノ包皮ニ就テ」

344人のうち、包皮をのばしても「亀頭を覆えない状態」が27人、「故意に包皮をのばせば覆うことが出来る状態」が317人でした。つまり一見すると「むけている」ように見える人のうち、多くが実際は包茎かもしれないという結果だったのです。

兵士の中には「亀頭を露出させる状態にし続けていたら、巻き上がってそのままの状態でとどまるようになった」という声もあったと書かれています。

この時代にはすでに、包皮に覆われていない状態が望ましいと考えられていたことがうかがえる論文でした。


海外の状況は…


海外の状況はどうでしょうか。
小貫教授は、全く異なる認識を持っていると話します。

東海大学 小貫大輔教授

小貫教授
「包茎を表す単語“phimosis”はありますが、これは日本で言う『真性包茎』のみを意味します。『仮性包茎』を表現することばが、英語やヨーロッパの言語では存在しないんです」
「宗教上の理由などで、包皮を幼いころに切る『割礼』をする人がいるので、ふだんから覆われていない状態の男性器を見ると、『割礼しているのでは』と認識されます」

小貫教授によれば海外では、割礼を除けば平常時はむけていないのが当たり前で、“natural”、つまり手を加えられていない「自然」な状態なのです。
手を加えてむけた状態にするのは、主に日本だけの文化かもしれないと話します。

小貫教授
「海外では“包皮を切除するのは、人権侵害”という考え方もあり、“むける/むけない”ではなく、“切る/切らない”が議論のポイントなんです」


自分は大丈夫?に応える


包皮をめぐる考え方は、地域の文化や宗教などによっても大きく異なるようですが、世界的に見れば「自然だ」と考えられている状態を、恥ずかしいと考えたり、劣等感を持っていたりしているのが日本の現状かもしれません。

スウェーデンで、主に若者の教育むけに配布されている「男性器」の冊子を見せてもらったことがあります。

包皮が覆われたり、覆われていなかったり、さまざまな状態の写真が掲載されていて、いろいろなケースがあると知ることができ、不安にならずにすむ要因かなとも思いました。


“えんえん”を終わらせたい


100年以上前からえんえんと続くこの問題。

自分も中学生のころでしょうか、悩んだ経験があります。
雑誌を見ると包茎であることが悪いことのようにも書かれていて、なにが本当かよくわからず友人に聞くのも恥ずかしい、ましてや親には聞けませんでした。

そうした状況はインターネットで情報があふれるいまの時代もほとんど変わらないようです。

日本ではこうしたことについて語るのがちょっとはばかられるような文化というか雰囲気が確かにあって、それが“包茎”というごくふつうの状態を、悩みの種にしてしまっているように感じます。

“学校できちんと教えてほしい”
と思う気持ちもありますが、親になった身としてはそこにだけ頼らず勇気を出して子どもにも教えていこうと思っています。

恥ずかしいかもしれないけれど正しいことをきちんと話す、そうした雰囲気が広がっていって欲しい。

そうすれば包茎を本当は存在しないおばけのようにこわがり、悩み続ける人もいなくなるのではないかと思うのです。

悩まなくてよいことに“えんえん”と悩み続けることをもう終わりにしたい、最新の調査と明治時代の研究を読んで、そう感じました。

            ネットワーク報道部 記者  高橋大地

 

カテゴリー: からだ パーマリンク

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