日本文化の断絶~「幸せコース」の中間報告~

「幸せコース」は全部で7クラスありますが、そのうちの4クラスの第1回目が昨日までに終了しました。
受講された皆様、お疲れ様でした。
きのうまでに感じたこと。
それはひと言でいうと、「日本文化の断絶」です。
ちょっと大袈裟に聞こえるかも知れませんが、それが正直な気持ちです。
日本人は本来器用な国民です。
ですから、包丁を使うことも、指先を使うことも、いとも簡単にやってのけたはずです。
それがものの見事に、今、崩れ去ろうとしています。
原因は様々あるでしょうが、一つは幼児期に手にする玩具に完成品が多過ぎるのではないかと思います。
それから二つ目は、学校教育があまりにも知識偏重になって、知恵や技術の価値観を疎かにして来たのではないかと思うのです。
さらに三つ目として、お母さんが台所でお料理をする姿を、子供が目にする光景が少な過ぎるということです。
この三つ目の原因が一番大きい問題です。
本来お料理に関する様々なことは、祖母から母へ、母から娘へと伝えられたものであって、ことさら習いに行かなくても、それなりに必要なことは身につけたものです。
しかし、女性の高学歴化・社会進出に伴って、幼い時からお料理について自然に学ぶチャンスを失ってしまったんですね。
幸い私の母は、古い世代の女性なので、私たち姉妹は母の背中やお尻を見ながら、お料理のことを空気のように身につけて育ちました。
お絵描きをしていても、積み木をしていても、お料理の音を聞きながら「今何を作っているな」と察したものです。
何かをこねている時のお尻の動き具合などは、懐かしい母の後ろ姿に繋がります。
また、小豆を煮ている時のフツフツとした音で、明日はおはぎが出来るんだな?と思ったり、あるいはプッツン、プクンと煮詰めていると、「あ?、羊羹が出来るんだな?」と楽しみになったりしたものです。
そんな何気ない日常の一コマが、間接的なお料理教室になっていました。
          *   *   *   *
ところで、「幸せコース」にいらして下さった方々の包丁さばきを拝見していると、「包丁を怖がる人」が多いです。
これは単純に包丁を手にされる回数が少ないだけですね。
ですから、当然のことながら包丁を研いだ経験がある人も少なく、8割の方が未経験でした。
それでも最後に、中川さんから包丁の研ぎ方を教えてもらって、綺麗に洗った後の皆さんのお顔には、爽やかな安堵の笑みがこぼれていました。
たった4回の経験ですが、どのクラスにも共通しているのは、「切る」ことを意識して、きちんと包丁と向き合った経験がない人ばかりだったことです。
年齢に関係なく、そのチャンスがなかっただけなんですね。
だからこそ、お料理教室にいらしてくださったわけですが。。。
それはそれでいいのですが、そのようにしてしまった親世代の家庭料理のあり方、学校教育のあり方、こちらの方が問題だと思います。
いわゆる「日本料理(日本文化)の断絶」が起きているからです。
           *   *   *   *
一昨年、おせち料理をみんなで作るイベントがありました。
参加者は40名くらいいたのですが、昆布巻きを始めたところ問題が発生しました。
かんぴょうで昆布を結べない人が続出したのです。
本来の日本人ならなんてことのない行為「結ぶ」。
着物を着なくなったせい?
風呂敷を持たなくなったせい?
大急ぎで結び方特訓をしました。
なぜなら、昆布巻きの結び目は「縦結び」になっていると、煮ている途中でほどけてしまうので、必ず正しく結ぶ必要があるからです。
次から次へと結び直しをして数えたところ、正しく結べていたのは全体の3分の1でした。
参加者の多くはお料理教室に通った経験があるというのに・・・。
「結ぶ」というのは、生活のあらゆる場面で登場する基本になる行為です。
マクロビオティックでいうところの陰陽からみても、とても意味のあることなのです。
しかし、この「むすぶ」行為がきちんと出来ないということは、そこから派生するあらゆる行為が上手くいかないことが予想されます。
身近なところでは、エプロンのひもを結ぶ。
女性ならヘアースタイルの一部にリボンを結ぶ。
街の中でも「あれっ?」という人を見かけます。
「むそう塾」にご縁のあった方々は、ぜひ「むすぶ」ということを意識なさってみてください。
そして、「幸せコース」にいらした方は、絶対に「美しい切り口」と「美しい結び目」を作れる人になりましょうね。
なぜなら、その結び目は、あなたと誰かを結ぶ絆になるからです。
ほどけやすい結び方をし続けて、誰かとの絆が切れてしまわないように。
優しい、丁寧な想いを込めて、ふんわりと、しかし要所はキリッと結んだ固い絆は、一生のあなたの財産になるはずです。
一方、自然と切れて行く人間関係は、整理にもなり、新しい始まりのスタートでもあります。
ことさら意識しなくても、何だか風通しのいい人間関係もまた、かけがえのない財産です。
お料理における「切る」・「結ぶ」は、人生の「切る」・「結ぶ」に繋がります。
だからこそ、お料理における一つひとつの行為を、きちんと自分のものにして、次の世代に渡してあげたいですね。
断絶されかかった日本文化を、今のうちに正しくお伝えすることはとても大切なことです。
その一つの場所として、「むそう塾」が何かしらお手伝いが出来たら嬉しいです。

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コメント

  1. Sa(12-12) より:

    昨日の幸せコースでは、大変お世話になりました。
    中川さんと美風さんに圧倒され感動し、今も幸せ感が続いています♪
    本当に、素敵なご縁と学びを、ありがとうございます。

    海外での生活を終え、戻りたくて戻った日本の生活。
    でも、私が求めているのは、便利になりいつでも何でも欲しいものが手に入るコンビニが近くにある生活でも、情報に溢れて間違いのない(?)速報がすぐに飛び込むニュースでもありません。

    日本は、本当に恵まれている国だと感じます。
    他のどの国と比較しても豊かにある森や水、歴史のある伝統や文化、治安の良さ、”あうん”の呼吸が通じあえる心地よい距離感…。
    離れていた時間があるから、本当によい面もたくさん感じるのです。

    欲張りな私ですが(笑)、日本の伝統文化すべてを知ることなんて到底無理!
    でも、私が一番興味がある食と料理の一面から、地に足の着いた日本のよさを、しっとりと身につけたいです。
    そして、日々の生活の中で、丁寧に手作りを続ける私の姿を、子供に見せていけたら…、素敵ですね。

    また、美風さんと中川さんに関わらせていただく中で、たくさんのことを吸収させてください。

    どうぞこれからも、よろしくお願いします。

  2. Ha(12-10) より:

    こんばんは。
    私もマクロビオティックの料理教室に通っていて知らない事が たびたびありました。いい歳をして恥ずかしかったです。子供の頃から家の手伝いも結構していたばずなんですが、母も知らなかったのか私に伝わらなかったのかわかりませんが…。戦争も日本文化の断絶に関係があるのではないかと思っています。結び方は着付け教室で習いました。昆布巻きも途中でほどけないので大丈夫だと思いますが。(ドキドキ)着物を着ると体のセンター(芯)が通って丹田の形成にも良いと聞きます。私も去年から時々着物を着て家事をしたりします。7月か8月は浴衣で幸せコース受講なんてどうでしょう。美風さんもですがなかがわさんは 似合いすぎますね。

  3. さかとも より:

    私は田舎育ちで、畑や田んぼの中で、大家族の中での生活でした。なので、生産する、育てるという部分に関する日本文化はかなり身近ですが、お煎茶を習うようになってから始めて知った日本文化も多々あり、これではいけない・・・と感じたことを思い出します。

    そう、着物の文化。確かに着物を着ると、お茶道具一つ扱うにしても、体の正面にお道具がないと、美しく扱えないです。でも、洋服だと、斜めを向いていても、足を崩して座っていても扱えます。子どもが生まれてからは着物を着る機会が殆んど無くなりましたが、久しぶりに着てみたくなりました。・・・でもお太鼓のやり方・・・忘れたかも。大変(汗)

    日本文化は断絶したのかもしれませんが、むそう塾で学ぶ中で、少なくとも自分の子どもや家族と共に日本文化を楽しみたいものです。

    中川さんの包丁さばきを見て、本当に美しいと思いました。一朝一夕には習得できないかもしれませんが、見ていて「この人のご飯を食べてみたい」と思わせるような包丁さばきとか、立ち居振る舞いが出来るように日々精進します。

    これからもご指導、宜しくお願いします。

  4. Fiona より:

    耳に痛いことばかりです。

    私はお料理が苦手で、包丁もろくにできていません。
    今の台所がまな板を置けるスペースもない、
    ということもありますが、でもそれは言い訳です。

    きちんとお料理ができることも、日本文化を
    伝えることなんだと思いました。
    お茶とか、お花だけではなく、食文化もまた
    日本文化なんだということに改めて気付きました。
    なんだかうっかりしていたなあ。

  5. Ta(8-9) より:

    私もFionaさんと同じく耳が痛いです。

    小学生の頃から学習塾に通い、夜に帰って1人でご飯を食べ・・・という生活を送っていました。
    母親はフルタイムで働いていたので、夜ご飯のおかずはスーパーの惣菜だったりもしました。
    淋しかったですが、子供を育てる為に必死で頑張ってくれていた母親には、不満はありません。むしろ感謝しています。

    結婚前になって、料理が出来ない焦りから料理教室に通いましたが、中川さんで教わったような事ではなく、料理のレパートリーを増やす為の授業でした。

    なので、幸せコースは正に花嫁修業の場だなぁ・・・と感じています。
    これから色々な事が学べるのが嬉しいです。

  6. マクロ美風 より:

    幸せコース、お疲れ様でした。
    遠いところをありがとうございました。

    日本の良さは日本を離れて知ることが多いですよね。
    あるいは日本人が気づいていなくて、外国の人から教えられることもあります。
    気づいていない日本の良さ、忘れないでほしい日本の文化、捨てないでほしい日本人の良さ、そんなことをむそう塾で一緒に確認しましょうね。

    Saさんはこれからが正念場です。
    ぜひ、お子さんに後ろ姿を見せてあげましょう。
    それが何にも勝る財産になります。

  7. マクロ美風 より:

    おはようございます。

    >戦争も日本文化の断絶に関係があるのではないかと思っています。

    はい、当然ですね。
    アメリカは日本を脅威に思っていましたから、徹底的に日本の文化を壊す作戦に出たわけです。
    その一つが日本の食文化を壊すことでした。
    それから教育ですね。
    どちらもものの見事にその目的を達成しています。
    でも、そんな中にあっても、京都の美しさを残してくれたことはありがたかったですね。
    大切に守りたい街です。

    着物の方ですが、私の母は毎日着物姿なので、当然景色のように目に焼き付いていて、自然に覚えました。
    父が着物姿の女性が好きだったので、私は北海道に帰省するときは着物を着て帰ったものです。
    目を細めて喜んでくれました。

    ところで、着物の柄や着方にも、関東と関西の違いがありますね。
    京都で着物姿を見かけると、「ああ、京都なんだな~」と感じますもの。
    たとえば、紫の色の選び方も京都と東京では違いますね。
    なお、着物の着方にはその人の品格が表れますので、間違った着方はしないようにしたいですね。
    こんなことを言うと、「だから着物は面倒くさい」とお若い方に嫌われてしまいそうですが・・・。

    >着物を着ると体のセンター(芯)が通って丹田の形成にも良いと聞きます。

    はい、おっしゃるとおりですね。
    腰紐はウエストにするのではなく、腰骨の上を通りますので、重心が下にさがって丹田に意識が行きます。
    このことが落ち着きや安心にもつながるんですね~。
    着物は氣を整えます。

    浴衣で幸せコースですか。
    素敵ですね~。
    そんな光景を想像しただけで、心が和んで来るから不思議です。
    着物って、やはり日本人の原点なんだと思います。
    私はともかく、中川さんはバッチリお似合いですよね。
    体型的にも(なで肩といいお腹といい)、着物にピッタリですものね。
    何やら昔は着物姿で祇園に出没していたらしいですよ。
    モテたことでしょう。

  8. マクロ美風 より:

    さかともさんは生産や育てるという、いわゆる第一次産業の景色が目に焼き付いていらっしゃるんですね。
    それはとても貴重な財産です。
    そして、大家族で育ったことも財産ですね。
    そのことだけでも自信につながりますから、ぜひ、その光景を思い出して、お腹でものを考えるようにしてください。

    さかともさんが自然に抱かれた時に感じる安堵感。
    その心のゆとりを、ぜひお子様にも与えてくださいね。
    さかともさんに必要なのは、「大丈夫」という強い自信と、遠くを見ることのできる目です。
    さかともさんの中にはすでにその土台はあるはずなので、あとは人間関係がスッキリできれば飛躍できるはずですよ。
    中川さんと私がついています。
    安心して羽ばたいてください!

  9. マクロ美風 より:

    おや?
    まな板が置けない?
    大丈夫。
    まな板は大きさがいっぱいあります。
    オモチャのようなまな板まで。
    要はお料理をしたいかどうかなんです。

    「食文化」という言葉があるように、お料理は文化そのものです。
    伝統料理、郷土料理には、脈々と受け継がれて来た文化があります。
    どうぞ、「食」を大切に出来る人になってください。
    素晴らしいFionaさんでいらっしゃるためにも。

  10. マクロ美風 より:

    多いですよね~、Taさんのように育っていらっしゃる方が。
    私の家の周りには学習塾がゴロゴロあるので、昔のTaさんのような子供が夜遅くに歩いています。
    それぞれのご家庭の価値観があるので、何とも言えませんが、家族が揃ってお食事ができる環境になると嬉しいですね。
    子供に何を残してやりたいのか。
    親がこのことをどの程度実行できるかだと思います。

    >結婚前になって、料理が出来ない焦りから料理教室に通いましたが、中川さんで教わったような事ではなく、料理のレパートリーを増やす為の授業でした。

    「むそう塾」は、半世紀を生きてきた中川さんと私の総決算の思いで立ち上げた塾です。
    人間にとって何が一番大事なのか。
    絶対身につけたいものは何なのか。
    二人の失敗と経験を織り込みながら考えたカリキュラムは、きっとTaさんのために役立ってくれると信じています。
    Taさんは私の娘だと思っています。
    一緒に頑張りましょう。

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