煮物の力(2) マクロビオティックの中庸力 

10月の上級幸せコースは煮物三種、11月の幸せコースも煮物三種、その他にも煮物コースがあって、むそう塾は今、来る日も来る日も煮物の幸せな香りで癒やされています。
煮物っていただく時にもほっこりとして落ち着くのですが、作っている時にも穏やかで幸せな気持ちになれるお料理です。

その穏やかさの一つの要素として火力があげられます。
煮物には「コトコト」を実現するために、極弱火の火加減を必要とします。
そのトロトロとした火加減は穏やかな陰性の波動を発しているので、そばにいる人は落ち着くのです。
いつも強い火加減のお料理ばかりしている人は、この弱火の調節が苦手なので、教室でも騒々しい音を立てて冷や汗をかいていらっしゃいます。
強い火(陽性)の波動を受け続けていると、作っている人がお料理中にも陽性になるので、お料理方法の陰陽はとても大事なのです。

私がまだむそう塾を始める前の料理教室で、忙しいからと言って野菜炒めばかり食べている人がいたのですが、精神的にとてもきつい状態だったので、1か月間野菜炒め禁止令を出したことがあります。
するとどうでしょう!
1か月後には表情まで柔和になって、本人曰く「すごく楽になった!」と仰るではありませんか!

その時私はつくづく思ったものです。
料理方法の陰陽の影響がこんなにも大きいのなら、今の時代に一番不足している「煮物」をもっと口にしてくれたら、精神的に安定する人が増えるだろううなぁと。
イライラする状態は、揚げ物や焼き物が多かったり、その時に高温加熱で酸化した油脂が肝臓に影響することも一因になっています。
高温調理の揚げ物を毎日食べていて、毒消しが十分に出来ていない人は、病気への道を歩んでいることになりますので、ぜひ穏やかな火加減で調理したものを召し上がってほしいです。

たとえば揚げたての鶏の唐揚げにキャベツの千切りなら陰陽バランスが良いのですが、鶏の唐揚げだけをテイクアウトで買ってきて、それをムシャムシャ食べていると毒消しが出来ません。
じゃあ、某店のメニューのように、チキンの唐揚げとポテトフライを食べれば良いのかというと、食材の陰陽バランスは取れますが、どちらも揚げる調理方法なのが問題です。
じゃがいものせっかくの陰性さがここでは陽性がプラスされて、毒消しの役割としては弱いものになってしまいます。
この場合にチキンとポテトで、動物性と植物性のバランスが良いと思うのは、マクロビオティックの陰陽を一面でしか考えていないことになります。
このような時には、ポテトフライを「粉ふきいも」に変えると、キャベツに次いでバランスが良くなるんですけどね。

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こんなふうに煮物がなぜ中庸の力を発揮してくれるかというと、それは100度以上に上がらない調理温度と水分の存在があるからです。
人の体は水分からとても影響を受けます。
どんなお料理を食べるかも大事ですが、どんなお水を飲むか、どんな水分を口にするかは、その人の生命力に直結するといっても過言ではありません。
なぜなら、人の体の70%前後が水分だからです。
この割合は年齢によって異なり、赤ちゃんは水分量が多く、お年寄りは少なくなりますが、それでも体重の一番多い部分を水分が占めていることに変わりはありません。

ですから、体の水分に良い影響を与える食べ物と飲み物の質がとても重要なのです。
さらに体の水分は環境と同期しようとしますので、体に水分の多い人は外気温が下がると冷えを敏感に感じ取ります。
甘いものが好きで、体に水分が多めで、冷え性という若い人がとても多いのは、こういう背景があるからですね。
そういう人がコトコトと炊いた煮物を常食するようになると、体型だけでなく精神面まで変わって来ますよ。
こういうところでも煮物の力を感じることが出来ます。

煮物は作り置きができる上に、時間が経ってからの方が美味しさも増すという特長があります。
忙しいからと言って煮物を作らないのではなく、忙しいからこそ煮物を作っておいて、心身ともに安定した状態を作り出すことが大事だということに気づいてほしいです。
煮物は材料を火にかけて、時々様子を見てあげるだけで、あとは弱火が勝手にお料理してくれる楽な料理方法なのです。
煮物が美味しい季節というのは、こうして優しい火加減で出来た質の良い水分が体を守ってくれます。
インフルエンザのワクチンがどうのこうのと悩んでいる暇があったら、煮物を作りましょう。
煮物は日々穏やかな陽性で体力をつけてくれますから、ウイルスに負けない体になるためにも煮物を見直してほしいです。

 
 

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(烏賊と里芋の炊いたん 料理:京料理人  中川善博 マクロビオティック京料理教室 むそう塾)

 
 

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