私が独身時代に読んだ本の中には料理に関するものがかなりありました。
お料理をするのが好きだったこともあるのですが、高校1年の時から作り続けていたお弁当を少しでも綺麗にしたいなあと思っていたからでした。
高校生の時から分厚い料理本を見ていた私は、日々自分が食べるおかずをどうしてもそこに出てくる写真のように綺麗に盛り付けたかったのです。
今から比べるとそれらの本は圧倒的に写真の枚数は少ないし、白黒の写真が多い中で、推測と想像の域を出なかったのですが、それでもお料理に対する関心はあったので、お弁当にもあれこれ工夫をしていました。
東京で働くようになった頃、ふと手にした本に沢村貞子さんのお料理本がありました。
芸能人が作る日常的なおかずってどんなものなのだろうという気持ちでページをめくって行くと、それはお料理本というより生き方の本のように感じました。
毎日の献立を書いてあったのですが、惚れ抜いたご主人のために1食でも多く手料理を食べさせたいからと、主役ではなくあえて脇役で泊まり込み撮影の少ない仕事を選んだと書いてありました。
そんな彼女の生き方に私は心から共感して、彼女の出演するテレビや映画は観なくても文字を通じて好きになりました。
撮影現場には可能な限り共演者やスタッフにも食べていただこうとお弁当を持参したそうです。
そのお弁当のおかげで雰囲気も良く、気持ちの良いお仕事が出来たと書かれていました。
そうだろうなあと思います。
お弁当って空腹を満たすだけのものではなく、気持ちをも満たしてくれるものだからです。
グルメに終わるのではなく、自分なりの哲学をもってお料理をすると、生き方が変わります。
その一つがお弁当ではなかろうかと私は思うのです。
私も中川さんと同時期に子供のためにお弁当を作ったのですが、残念ながら1枚も写真は撮っていませんでした。
たくさん写真を残していた中川さんは、その写真に感動した人たちに囲まれて今があります。
そしてまた、そのお弁当の世界を皆さんにお伝えする機会も生み出せました。
中川さんがお子さんのお弁当に込めた想いはただ一つ。
「お守りを持たせるつもり」だったそうです。
お弁当とは「自分(作った人)を持って行ってもらうもの」と中川さんは塾生に伝えています。
あなたは相手(食べてもらう人)にどんな自分を持たせたいですか?
輝きのある自分のために、お弁当に取り組んでみませんか?
(料理:中川善博 お弁当箱:お嬢さんが使っていたもの)