あれは、雨がそぼ降る夜のこと。
“魂のシャンソン歌手 若林ケン”さんのお店に、一人でふらりと行った。
運良くお客は私だけ。
そう、それを狙って雨降りを選んだのよ・・・。
しばらく、ケンさんと二人でお話ししているうちに、一人の女性が入って来て、私の近くに座った。
そのうちに、男性ばかりが大勢入って来たので、その女性は少しずれて、私の席と隣同士になって、話を始めた。
名古屋から来たという彼女は、東京でのコンサート当日に、会場でのみ発売されるCDを欲しがっていた。
そこで、「私は、コンサートに行くから、買って送りましょう」と申し出た。
* * * *
やがて、男性達が帰って、その後に3人連れの男女が入って来た。
ケンさんの態度を見ていると、大事なお客さんであることが察せられる。
だから、私は帰ろうと思ったのだけれど、ケンさんは「帰すもんか」と言って、何曲も歌い続けてくれるので、ありがたく聴かせてもらった。
3人連れのうちの一人、初老の紳士は、私の目を見ながら話をしてくれていたが、ケンさんの仕事の話になった時、ケンさんの目をしっかり見据えてこう言った。
「人生は晩年だからね」
ケンさんは、「はい」と答えていた。
お店を後にしてからも、そして何十日も経った今でも、あの男性のことや、ケンさんの真剣な表情と共に、この言葉はいっそう輝きを増してくる。
「人生は晩年だからね」
特別な環境に生まれ育ったケンさんにとって、さらに60歳にして初めてのコンサートデビューをしたケンさんにとって、この言葉の持つ意味は重い。
* * * *
私は、遅い年齢になってマクロビオティックと出会ったけれど、その素晴らしさを多くの人に、正しく伝えたい気持ちでいっぱいだ。
そんな時、この言葉は、私に限りない勇気を与えてくれる。
「人生は晩年だからね」
長い一生のうちには、何があるか分からないけれど、どんなことがあったっていいんじゃない?
人生は、若い時だけじゃないよ。
晩年だって勝負できるのさ。
* * * *
名古屋の女性が、CDを送ってくれたお礼にと、坂田明さんのCDをプレゼントしてくれた。
タイトルは「ひまわり」。
そう、あの感動的な映画の「ひまわり」。
目に焼きついて忘れない、あの光景。
一面にひろがる広大なひまわり畑。
懐かしい・・・。
雄大なメロディー。
今も、この音楽が流れている。
逞しく、夢を追って、ひまわり畑のように雄大に生きてみたいな。
「晩年が一番充実していたよ」と言えるように。
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