極上を生み出すための道具選びから学んだこと 中川善博の世界

中川善博の道具 ラテ・アート

 
 

中川さんは今、ラテアートに夢中になっています。
まるで子供が欲しかったオモチャを手にして、夢中に遊んでいるかのような感じです。
ご自身は普通の珈琲をブラックで飲んでいるのに、そんなにラテアートに夢中になるのが最初は分かりませんでした。
エスプレッソマシーンを購入したり、どんどん居住空間は珈琲関連の品物で狭くなって行きます。

先日も子供のように目を輝かせて、ミルクピッチャーの話をしてくれました。
その時に思いました。
「ああ、この研究熱心さはお料理を美味しくさせる研究と一緒なんだな」って。
私は珈琲を飲むと胃が痛くなるので、よほどのことがない限り飲みませんが、何回か中川さんの珈琲を試飲させてもらいました。
すると、私の嫌いな苦味がどんどん改善されているのです。
淹れ方はもちろんですが、豆の選定も大きく影響しているようです。

珈琲にはまったく門外漢の私ですが、中川さんがラテアートに取り組むにあたって道具をあれこれ工夫される姿は、包丁砥ぎの角度や、玄米炊飯のお鍋の選び方や、様々な食材の選び方と共通していました。
それは徹底して妥協を許さないことです。
そのためには新しい道具を創り出してでも、自分の考えている世界を実現させるという徹底ぶりです。
創り出そうとしている改良点は、素人の私でも説明されるとコックリと納得できます。

ふと、なんでこんなに中川さんは自分が飲まない珈琲のラテアートに没頭するのだろうと思いました。

ある日ボソッと中川さんからその答えをもらいました。
「塾生に、出来ないことを出来るようになれと言っているだけでは申し訳ない。自分にも、出来ないことを出来るようになる姿勢は必要だ。」ということでした。
玄米炊飯をはじめとして、桂むきや出汁巻き玉子など、難しい技術に取り組むむそう塾生はたくさんいます。
その指導は単に中川さんがすでに身につけている技術のみで行なっているわけではなく、こうしてご自身も一緒に塾生の気持ちを共有しながら上を目指しているのです。

そのために、写真のように様々なミルクピッチャーが改良を重ねて並んでいます。
まだまだ中川さんの研究は続いています。
今、出汁巻き玉子の練習をされている皆さんも、中川さんの基本に忠実な生き方を励みに頑張ってください。

つくづく思います。
上達とは、奇策があるわけではなく、たゆまぬ練習と工夫する心が裏打ちするのだと。

 
 
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