プレッシャー

6月から7月にかけて、むそう塾では恒例の桂剥き投稿がありました。
お料理の基本中の基本である庖丁の使い方を確実に身につけるために、むそう塾では桂剥きを徹底的にフォローして技術の向上のために、教える側と教わる側が二人三脚で頑張っています。
これはプロである中川善博さんだからこそ出来る指導で、写真や動画を駆使して行なうアドバイスは、一つひとつに唸ってしまうほどの秘伝がビッシリです。
マンツーマンでここまで指導するお料理教室は、きっと日本中のどこを探してもないことでしょう。
おそらくプロになろうとしている人は、喉から手が出るほど教えて欲しい技術だと思います。
あの熱かった桂剥き月間も終わって、今月のむそう塾は麺類や夏野菜を美味しくいただくメニューが花ざかりです。
皆さんの手元をみていると、1ヵ月間頑張った人、1ヵ月間逃げていた人の差が歴然としています。
庖丁を正しく持てる人は、見ていても安心ですし立ち姿も綺麗です。
当然のことながら材料の切り口が庖丁の使い方で表情が違います。
そしてそれはお味にも影響します。
ですからむそう塾では、美味しいお料理を作るための前段階として、庖丁の正しい持ち方や切り方をお教えしているのです。
さて、この桂剥き投稿で、写真や動画を撮ると緊張するという人がいました。
ま、慣れていないから当然かもしれませんが、人間はプレッシャーにも強くなれた方が「より上」を目指すことができます。
オリンピック選手などはプレッシャーとの闘いであり、その「より上」も気が遠くなるほどの僅差だったりします。
お料理ではそんなプレッシャーは無縁だと思われるでしょうが、ところがどっこい案外プレッシャーで上手に出来なかったという場面があるのです。
たとえば中川さんに出来を見てもらおうと思って作ると、いつものように出来なかった、炊けなかった、切れなかったということはよくあります。
*   *   *
しかし、これは中川さんからお聞きした話なのですが、「一流の料理人はプレッシャーに強くなければ務まりません」ということでした。
たとえば有名なお客さんが来られる、絶対失敗の許されない人にお出ししなければならないというのは当たり前だからです。
一流のお店であればあるほどそれは日常的なことになりますが、時には相当緊張する場面もあることでしょう。
それでも期待どおりの味を提供するためには、いかにうまくプレッシャーに負けない自分でいられるかが勝負です。
単純に美味しいものを作れる技術があれば良いのではなく、精神面での強さを併せ持っていなければ一流にはなれないということです。
こんなことがありました。
明日が愛クラスの開催日という日の午後に、中川さんのお母様が亡くなりました。
早めに京都入りした私とこれから打ち合わせという時間に病院から呼ばれた中川さんは 、お母様の死に直面しました。
翌日の愛クラスのために遠くから来られる方は、もう出発されている人もいます。
愛クラスは変更することなく、一睡もしないで中川さんは翌日の朝からお料理の仕込みをしてくれました。
お父様が早くに亡くなった中川さんにとって、お母様の死は大きな悲しみだったことでしょう。
それでも気丈にいつも以上に氣のこもった見事な玄米ご飯を炊きあげてくれました。
その時に中川さんの精神力の強さを垣間見た気がしました。
中川さんは昭和天皇に供するお料理も作られたことがあるそうです。
腕の良い料理人たちに声がかけられ、お店を代表して天皇陛下の召し上がるお料理を作るわけですから、当然のことながら失敗は許されません。
それだけの腕と精神力を備えているからこそ選ばれたのだと思いますが、この精神力は一夜にして出来上がるものではありません。
日々の暮らし方や生き方が精神を育てます。
いざという時にプレッシャーに弱い人は、意識して強くする必要性があります。
そのための特効薬はありませんが、少しでも成功体験を多くもつことは確実にプレッシャーを減らしてくれます。
「出来た!」という手応えは自信につながり、弱気なときの励みになります。
たかが桂剥きと思われるかも知れませんが、その桂剥きからは実に多くのことが学べます。
むそう塾は人間塾と位置づけてご指導していますので、お料理から自分を変えていくことが可能です。
その結果プロ仕様のとびきり美味しいお料理が作れるようになるのですから、こんな凄い塾ってないなぁと自画自賛してしまいます。
中川さんの手元を見ていると、毎回発見があったり、奥深さを感じたり出来て楽しいです。
中川さんのお料理からは「格」や「品」というものが漂って来ます。
これが私の惚れ抜いている中川ワールドです。
きょうは上級幸せコースDクラスの授業があります。
塾生さんの喜ぶ顔や表情をカメラに収めて、笑顔と感動をお伝え出来る一日にします。
笑顔と感動の連続は、間違いなくプレッシャーを遠ざけるからです。 
 

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コメント

  1. より:

    美風さん
    おはようございます。
    今朝中川さんに見ていただくつもりの出汁巻き玉子を、まんまと失敗したのはわたしです…。
    つくづくプレッシャーに弱いです。。

    練習を本番のつもりで、本番を練習のつもりで
    ふだんから120%で
    というのを心がけようとしているのですが
    やっぱり自分に甘いこともあってままなりません。

    講座の日、できた!と思えたその瞬間は嬉しくて感動して、
    大きな支えになってくれます。
    ブログに自分の笑顔の写真があるとその瞬間を思い出して
    この時できたのだから、と思えるのでとてもありがたいです。

    そのときに失敗しても復習でできるようになると、嬉しくてちいさな自信のもとになってくれます。
    懲りずにめげずに積み重ねて、
    失敗の上に成功を積み上げて自分をぶ厚くしていくしかないんだな、とつくづく思います。

    むそう塾に、わたしはたくさんの経験をさせていただいています。
    甘えさせて寄りかからせてもらってばかりで申し訳ないですが、
    上級に通うことができるこの一年間に
    できるだけ積み重ねてすこしでも多くの自信をつけてゆきたいです。

    今日も作るのが初めてのお料理でどうなることやら…ですが
    学ばせていただけるのが嬉しいです。
    これからもよろしくお願いいたします。

  2. おはる より:

    美風さん、こんにちは。
    投稿期間が終わり、自分のペースで剥いたり、
    お料理したり。の、毎日です。
    ふっ、と、あの一か月を振り返り、
    あの時向き合ってた自分、悩んでたこと、
    越えられない壁はそのままなのに、
    すっかり緩んでるなぁ、と、
    我に返っていたこところでした。
    中川さんからもご指摘いただいたように、
    お尻を叩かれなくても自ら進化し続けなければ、
    と、その大変さを感じてます。
    いつでも、どんな時でも、
    当たり前のように剥ける、炊ける、
    精神力を含め、それが真の実力なのだと思います。
    まずは心あってなのだと、感じてます。

    焼うどんもラタトゥイユも、
    昨年に比べ、とっても、おいしくなりました。
    その表情の変化に驚いてます。
    切ることがお料理のすべての出発点、
    生きてる限り続けていくことなのだと、
    思いを新たにしています。

    素晴らしい学びをありがとうございます。
    これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

  3. マクロ美風 より:

    舞ちゃん、おはようございます。

    >ブログに自分の笑顔の写真があるとその瞬間を思い出して
    この時できたのだから、と思えるのでとてもありがたいです。

    素揚げの時の写真を写しておきましたよ~。
    今度はもう少し温度を上げましょうね。

    >そのときに失敗しても復習でできるようになると、嬉しくてちいさな自信のもとになってくれます。

    小さな自信の積み重ねがその人を強くしてくれるんですよね。
    だから舞ちゃんは今、毎日ちょっとずつ強くなろうとしているところだね。
    まだまだ積み重ねることがいっぱいあるけれど、私の歳になってもまだ終らないから、一緒に頑張って上を目指してみようね。
    むそう塾がついているから大丈夫。
    一人ぽっちじゃないよ~。

  4. マクロ美風 より:

    おはるちゃん、おはようございます。

    あらら、ゆるんじゃったのね~。
    ま、それもいいでしょう。
    だってあの時は一日中桂剥きのことが頭を占めていたからね。
    でも、毎日ひとさくは続けられた方が良いと思います。
    数ではなく、集中してのひとさくは、投稿期間中とは違ったおはるちゃんのモードになれるからです。
    焦るのではなくじっくり。
    そんな生き方をしてみましょう。

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