不変であるための変化(必読)

中川さんが貴重な文章を書いてくださいました。
お料理の世界を知り尽くした人の文章だなぁと、つくづく思います。
この文章の言わんとするところが、どうかあなたに伝わりますように。

 
 

<不変であるための変化> むそう塾 中川善博

何代も何代も受け継がれている老舗の味は、何代も昔の味のままでは無い。
厳しい研鑽と市場調査の上に、微妙な変化変更が加えられている。
しかしその変化変更は消費者には絶対に気付かれるものであってはならない。
その努力を怠って昔のままの味を伝統の味と勘違いして変更無しで売り続けると、「味が落ちた」「先代は良かった」「親の七光りをも消す馬鹿者」と評判を落としてしまうのだ。
何十年にわたってのリピーターも新規客も同じように「美味しい」という評判を得るには、この微妙なさじ加減が必要なのである。
跡継ぎは現状維持では「親のおかげ」と言われ、派手に変えると「暖簾を汚す」と言われる。
大胆に繊細に紙一枚一枚をそっと重ねるような努力をし続ける事が、「いつ来ても美味い」と賞賛される唯一の方法である。

*    *    *    *

パスポートを取得した季節が冬だった者は夏に悩み、夏に取得した者は冬に悩む。
スキルとして段取りを追う事にのみ氣が行って、なぜそうするのかと言う事を陰陽をふまえて理解できていない者は、季節が変わると悩むのだ。
「いつも美味い」「あたりまえのように美味い」という事はもの凄く大変なことなのだと、パスを取ってから気付くのが常。

鍋の材質が変わり、中川式玄米炊飯法は進化した。
これは鍋の陰陽によるもの。
季節が変わると指導方法も勘所も変わる。
前に習ったのと炊き方が違うと言われる事もある。
そういう時は「あ、この人はパスを持っていても陰陽が解っていないな。」と残念に思う。

米が変わり、気温が変わり、水温が変わり、年間を通じて一定なものは何も無い。
それは何故か?
「常に一定に美味い玄米ご飯を炊き続けるために」、常にダイナミックに変化していくのだ。

変化しないのは「美味さ」のみ。

そんな理由から私はレシピブックやレッスンDVDは世に出さない。
私の手から離れた瞬間にそれらは死に体となり、今に相応する料理法では無くなるからだ。
互いに目を見ながらの口伝によって、今美味いものを作るということはこういう事というのを伝えて行きたい。

そういう場がむそう塾であると確信している。

変わらない物は実はダイナミックに変化している。
むそう塾の門を叩いた者にはこの真理を理解して欲しいと切に思う。

 
 

参考記事
「玄米ご飯の炊き上がりが体調の陰陽を左右する」

 
 
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コメント

  1. azukki より:

    中川さん 素晴らしい文章をありがとうございます。

    美風さん ご紹介くださってありがとうございます。

    おふたりが「どうしても伝えたいこと」として、じっくり拝読いたしました。

    昨年度の幸せコースに通い、教えていただいたのは、まさに文章や数値では伝わらない、料理の勘所だった、と思っています。
    陰陽の理とともに、「この香り」「この色」「この音」「この感触」といった、その場で五感を研ぎ澄ませていなければわからない瞬間を体験させていただきました。
    そのように教えていただいたことはずっと忘れないし、応用がききます。
    生きた教え=口伝です。

    >年間を通じて一定なものは何も無い。

    コーヒー職人のそばで毎日仕事をしていて、彼が「いつでも一定レベルの美味しいコーヒー」のために毎日、毎回、焙煎の方法、ドリップの方法を微調整している(それは意識してではなく全く当然のこととして無意識にしている)のを目の当たりにしている私は、中川さんのおっしゃっているようなことを常に感じている・・・つもりです。
    「美味しいかどうか」「官能性があるかどうか」
    それが判断基準で、「美味しい」に近づくための手段は自分で五感で感じて変化させていく。

    すべては「美味しい」のために。

    むそう塾のありかたさえも、ときにはダイナミックに変化しそうですね。
    これからもワクワクさせてください。
    一生、むそう塾生としてよろしくお願いします。

  2. おはる より:

    美風さん、中川さん、こんばんは。
    貴重な文章をありがとうございます。
    お料理は、それだけで存在するのではなくて、
    めぐりゆく季節の中に、生きている人の間に、それぞれの土地でと、
    生きた環境と共にあるもの。
    立ち止まっていてはいけない。
    ひたすら、共に、まわりを感じながら、
    生き続けるのみですね。
    希望に満ちたメッセージをありがとうございます。

  3. kyoro より:

    美風さん、中川さん、こんばんは!
    素晴らしい文章ありがとうございます

    幸せコースで私の炊いた玄米ご飯を食べていただきアドバイスをもらっていますが
    その度に玄米ご飯の炊き方がどんどん進化しているんだ!と感じます
    まさにそのダイナミックな変化が変わらない美味しさを生みだしているということも実感しています

    私も愛クラス受講後やパスポート取得間もないころは
    「愛クラスのときに中川さんはそんなこと言ってなかった」とか
    「愛クラスのときは習わなかったのになんでそんなことするの?」
    なんて思っていたことがありました
    まさにスキルとして段取りを追うことに必死だったのです

    でも、今となっては
    中川さんに教えていただいた行程はすべて
    一年を通じて美味しいご飯を炊くことに通じていたと確信しています

    ご飯を炊くのに室温や水温が関係するのか?
    なんて思っていた自分が本当に恥ずかしいです

    まだまだ私は発展途上の身
    自分の感覚で浸水時間や火加減をバシッと決めたりはできません
    そのため室温や水温をてがかりに
    玄米の様子を見ながら浸水をし炊飯をします
    そのおかげで季節を問わず美味しいご飯が炊けています

    幸せコースでも口伝の重要性をつくづく感じています
    今日も白米の栗ご飯、車麩カツを復習しましたが
    復習のときに中川さんの手元、衣をつける感触、揚げる音など
    すべてが目の前によみがえってきます
    まさにこれが五感で学ぶことなんだと思います

    まだまだ私の理解は足りないかもしれません
    これからも中川さん、美風さんの「伝えたいこと」をしっかり理解し落し込めるよう努力します

    本当にありがとうございました

  4. ふみよ丸 より:

    中川さん、美風さん、ありがとうございます。
    >変わらない物は実はダイナミックに変化している。
    この感覚が実感としてわかったのは、桂剥き投稿の時でした。
    『 最初から最後まで同じように切るには、
      最初から最後まで同じように切っていたらダメ 』
    「あぁぁぁぁ~、そうか!!!!!!!!!」
    この中川さんの教えにより、私は芯の方まで美しく剥けるようになりました。

    そしてこの体験から、何となく変化させて炊いていた玄米ご飯も、季節に
    合わせて変化させるからこそ、美味しく炊けるのだという確信を得ました。

    そして、それは仕事にも。
    陽性のおじさん・陰性の女の子etc、それぞれに合わせて相談のスタイルを
    変化させると、なんだかスムーズにいくんです。

    お料理は、まだまだ不慣れですが、
    四季折々の旬の慈味を味わえる、恵まれた日本に生まれた喜びに感謝して、
    四季の寒暖にふさわしいお加減を身につけていきたいです。
    そして、健康で美味しい1日1日を楽しみたいと思います。

    どうぞ、よろしくお願い致します。

  5. mineral より:

    美風さん 中川さんおはようございます。
    中川さん、想いを言葉にしてくださって、ありがとうございます。
    美風さん、公開してくださって、ありがとうございます。

    先日の炊こう会で、まさに中川さんがこのことを目の前で見せて下さいました。
    一回目の炊飯では7人7様、それぞれの炊きあがりだったのが、中川さんの指導で、みんな、
    「中川式玄米」の美味しさに。
    皆さんの炊き上がった玄米ご飯を試食させてもらいながら、
    同じ味ではないのに、同じ美味しさを感じました。
    「どれも同じ方向性を感じるご飯だなぁ。これが中川式だなぁ。」と感じた事、今でも鮮明です。

    中川さんから、玄米炊飯を教わって、1年。
    季節の移ろい、いろいろな環境の変化にあわせて、自分なりに試行錯誤してきましたが、
    2度目の愛クラスと、炊こう会で、「なるほど!そういうことかぁ。」と腑に落ちた事が沢山ありました。
    そして、中川式の進化にも、へ~、そうかぁ。と。
    お料理を作る時、その一瞬一瞬で、「何故、そうなのか。」
    を常に感じ、考える。それが、美味しさにつながっていくこと。

    いつでも、何処でも、どんなときでも。
    「今、この玄米ご飯を美味しく炊く」
    そのことに集中して、私自身もダイナミックに変化して、
    でもいつも変わらず笑顔で歩んでいこうと思います。
    ありがとうございます。

  6. 夏目 より:

    美風さん こんにちは。
    中川さん 中川さんの思いのこもった文章ありがとうございます。

    いつも同じく出来上がるということは、作り手や素材や調味料、気候までもが左右するので、同じくお料理をしても同じには仕上がらないということをむそう塾へ通うようになり、改めてなるほど~と思った私です。玄米炊飯はまさに、その基本の基本ですね。美味しく炊けているのですが、まだまだ、自分がこうしたい!と思った炊きあがりにまでは至りません。

    いつも同じに仕上げるためには、常に様々な事も考慮しなくては
    ならない。そしてそれが、感覚として五感を使って、瞬時に
    判断でき、お料理ができる中川さんは本当にほんまもんの
    料理人なんだ~と、まだ中川さんの凄さをちょっとしか知らない
    ヒヨコです。

    そんな素晴らしい感覚をおしみなく、伝えてくださる、口伝して
    くださる心意気が本当に素晴らしいと思います。

    変わっていないようで実は変わっている。
    不変であるための変化!奥が深いですし、じ~んと
    来ました。

    つたない表現力&文章力でお恥ずかしいと思いながらも
    コメントさせていただきました。

    むそう熟生であることに誇りです。

  7. 夏目 より:

    見直してコメントを投稿したつもりが
    熟生→塾生の間違いでした。
    本当に情けない・・・
    すみませんでした。

  8. 絹子 より:

    美風さん 中川さん こんにちは。
    ありがとうございます。
    お料理の世界の言葉で語ることができないので、
    感じたことを書きます。

    「自分」というものを守り続けようとして、
    周りとぶつかって削れてしまったり、
    足りない部分を補おうと飾り立ててしまったり、
    ずっとそうやって生きてきたような気がします。

    周りをただあるがままに感じること、
    そうしたら「自分」など守らなくてもいいのだと
    思いました。

    全体というジグソーパズルの、
    1ピースですらなく、
    ただ周りがあることで形が見えてくる空白として、
    生きているのだなあと思いました。
    感謝ということがはじめてわかった気がします。

  9. まい2 より:

    美風さん、中川さん おはようございます。

    過去に、辛いことがあって、
    好きな仕事を投げ出してしまったことがあります。
    それからずっと、わたしには何もないと思っていました。
    逃げてしまった引け目だけがありました。

    でも、私にはいま、玄米炊飯があります。

    >「常に一定に美味い玄米ご飯を炊き続けるために」、
    > 常にダイナミックに変化していくのだ。

    うまく言えませんが・・・
    そうやって炊飯することは、
    地に足をつけて生きてゆくことなんだ。
    あぁ、こうやって生きてゆけばいいんだ、と思ったら、
    世界がぐうんと近く感じて、なけてきてしまいました。

    この記事のおかげで、
    自分の生きていく礎に触れた感じがします。
    (なんだか大げさですが・・・)

    目指すのは現状維持ではなく、前進することなのを思い出しました。
    いまは、まだまだだ、と思えることが楽しいです。
    すべて、紙一枚一枚の努力、なんですね。

    中川さん、美風さん、
    ありがとうございます。

  10. マクロ美風 より:

    azukkiさん、こんにちは。

    しっかりと受け取っていただいて嬉しいです。

    >むそう塾のありかたさえも、ときにはダイナミックに変化しそうですね。

    はい、もうリニューアルしちゃいました^^
    すべては皆さんの健康と幸せのために。

  11. マクロ美風 より:

    おはるさん、こんにちは。

    まわりを感じることが出来たら、次は実行出来る人になりましょう。
    今年はいっぱい実行しましたね。
    お料理の実行も頑張りましょう。
    徐々に伸びていますからね。
    もっともっとあなたは変われますよ♪

  12. マクロ美風 より:

    kyoroさん、こんにちは。

    あなたは本当に激変しました。
    今のあなたのお顔には、自信と希望と満足感と優しさをが満載された幸せ感を感じます。
    吸収が速いあなたらしいです。

    あなたの素晴らしいところは、ご自分を律することを心得ていることですね。
    それは過去のあなたの生き方が培ってくれたものです。
    素晴らしい過去をお持ちでお見事です。
    その素直な姿勢を忘れることなく、引き続き頑張ってください。

  13. マクロ美風 より:

    ふみよ丸さん、こんにちは。

    >『 最初から最後まで同じように切るには、 最初から最後まで同じように切っていたらダメ 』

    ありました、ありました。
    でも、なかなかこの意味をご理解いただけない方が多かったのですよ~(泣)
    頭では理解出来ても、腕がついて来ないというところでしょうか?
    それにはひたすら練習あるのみですね。

  14. マクロ美風 より:

    mineralさん、こんにちは。

    中川さんのお料理方法はすべてに意味があるところが凄いですよね。
    だから第三者に伝えられるんです。
    ファジーな部分が少なくロジカルだと思います。
    まさに男の料理ですね。

    これから「何故? どうして?」を一つずつ自分のものにして行きましょう。
    気づいたらあなたもお料理上手になっていますよ♪

  15. マクロ美風 より:

    夏目さん、こんにちは。

    中川さんを拝見していると、色々な面でプロの凄さを感じます。
    それは「一定であるための努力」とでも言いましょうか。
    そのための探究心には本当に頭が下がります。
    気さくに私達と接してくれますから友達のような感覚を持ってしまいがちですが、私はいつも尊敬の気持ちを失わないでいたいと思っています。
    そのような人から一緒に学べる幸せを、ともに大切にしましょうね。

  16. マクロ美風 より:

    (笑)見直しを見直しましょう^^

  17. マクロ美風 より:

    絹子さん、こんにちは。

    >「自分」というものを守り続けようとして、
    >周りとぶつかって削れてしまったり、
    >足りない部分を補おうと飾り立ててしまったり、
    >ずっとそうやって生きてきたような気がします。

    そんなものですよ。
    みんな多かれ少なかれそんな風にして生きています。
    でも、それでは疲れるときが来るんですよね。
    それは自分が中心になっているから。

    >周りをただあるがままに感じること、
    >そうしたら「自分」など守らなくてもいいのだと
    >思いました。

    これは自分が中心ではないのです。
    まわりと自分が一体となったのです。
    そこには守るとか守らないとかの感覚はありません。
    これがマクロビオティックの世界でもありますね。

    ただ生きていられること。
    そのことにとめどなく感謝の気持ちが湧いて来るときがあります。
    そんなとき人は本当に優しくなれるのだと思います。

  18. マクロ美風 より:

    まい2さん、こんにちは。

    人生には色々あります。
    気まずい過去もあったっていいじゃないですか。
    若気のいたりもあったていいじゃないですか。
    すべては学びに繋がります。

    聖人君子のように綺麗事だけでは生きて行かれません。
    時には素直になり、時には詐欺的な心になり、そんな自分に嫌気がさす。
    これが生きている人間ってものです。
    そうこうしながら成長して行くんですね。

    必要以上にご自分を過小評価しないようにしましょう。
    嫌味でない自信は有益です。
    視線は過去ではなく未来へ♪

  19. まい2 より:

    美風さん、お返事ありがとうございます。
    排毒コメント・・・でしたね。

    >視線は過去ではなく未来へ♪
    はい♪ 成長、していけるようがんばりますー!
    いつもありがとうございます。

  20. マクロ美風 より:

    きのう?
    そんな古いこと、忘れっちまったよ。

    そう言えると人生変わりますよ~。

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