マクロビオティックではお馴染みのお味噌ですが、今では他の食品と同じように新鮮な方が良いのだと思って、製造年月日の新しい物を選ぶ人がいます。
いやいや、そうではありません。
お味噌は昔から3年位経ってからの方が健康的でもあり、お塩も丸くなって美味しいとされています。
ですからわざわざ商品名に「◯◯三年味噌」などと入れたものもあります。
ということで、マクロビオティックではお手当てに使うときには必ず3年経ったものを使います。
先日もお味噌に対する認識が少しずつ変わってきたかのような記事がありました。
<「味噌汁は塩分が多い」は誤解!実はこんなに健康的だった>
一方、Facebookでもお味噌に関する記事がありましたのでご紹介します。
発酵についても解説したとても良い記事です。
むそう塾では糠漬けを通じても発酵を積極的に日々の生活に取り入れてもらっているので、より一層この記事の内容がコトンと納得できることでしょう。
2本の記事を転載させていただきます。
* * *
<吉富信長さんの記事より その1>
(転載はじめ)
元広島大学原爆放射能医学研究所教授の伊藤明弘氏は、マウス実験において、味噌を摂取することにより体内からの放射性同位元素の排出が促進されたことを報告しています。
実験では、
①乾燥赤味噌を10%混合したエサ
②醤油を10%混合したエサ
③食塩を入れたエサ(味噌と同じ塩分量)
④ふつうのエサ
の4群に分け、マウスに放射線の中のX線を照射しました。
この時、マウスの「小腸粘膜幹細胞」の生存率を調べました。なぜなら、放射線障害として、小腸の内側の粘膜がはがれおち下痢や貧血を起こすことがわかっているからです。
結果、①の味噌を混合したエサを与えたグループの生存率が最も高かったのです。次に生存率の高かったのが②の醤油でした。
また、ヨウ素131とセシウム134を投与した実験も行いました。
結果、味噌を混合したエサを与えられていたマウスが最も多くのヨウ素の排泄がみられ、セシウムについても味噌投与のマウスが最も筋肉内の放射性物質が減少していことがわかりました。
味噌の塩分についても、食塩のみを単独で与えると血圧上昇が起きますが、味噌を与えても血圧は上昇しないこと、また食塩単独では胃癌の発生率は増加しますが、味噌を与えても胃癌は増加しないことなどもわかっています。このことから、味噌中の食塩は食塩単独摂取とは異なる働きをするものと考えられます。
では、味噌のどういった成分が放射性物質の排泄の効果があるのでしょうか。
味噌のような発酵食品には有益な微生物や菌がいます。菌は有害物質を原子転換する働きがあり無害化していることが考えられます。
放射性物質はたんぱく質と結合しやすいという特徴があります。この働きをしている成分が多糖類(食物繊維)やピラジン(香り成分)などといわれており、結果、汗や尿として排泄されると考えられています。
また、ジピコリン酸に放射性物質を除去する働きがあります。さらに味噌にある酵素は強い解毒作用を持っています。これも放射性物質除去作用の要因となっていると考えられます。さらに、味噌食を習慣化すれば、死菌や胃酸を潜り抜けた微生物の曝露ができ、腸内環境を整えることができるようです。
熟成度の高い味噌ほど放射線防御の効果が高かいことも多くの研究でわかっています。
味噌に放射線への防御機能があることがわかっていた研究者らは、熟成度別で味噌の効果を実験してみました。(H.Watanabeら,2013)
マウス実験において、①2~3日間発酵させた味噌、②120日間の熟成味噌、③180日間の熟成味噌の3種類の味噌を使用しました。
マウスに8グレイの放射線を照射後、エサに①~③の各味噌を混ぜてそれぞれのグループごとに食べさせたところ、すべてのグループにおいて放射線防護機能は認められたものの、③の熟成期間の長い味噌を食べたグループの生存日数は有意にいちばん長かったのです。小腸腺窩再生においても、熟成期間が長い味噌ほど増加しました。
味噌を混ぜなかった普通餌や食塩餌においては、生存日数が最も短く、小腸腺窩再生も増加しませんでした。さらに、照射直後や1日・2日後に味噌餌を食べさせても小腸腺窩再生は増加しませんでしたが、被ばく1週間前から味噌を食べていたマウスにおいては、小腸腺窩再生が増加しています。
以上より、味噌が放射線に対する防御効果を発揮するのは、照射後、味噌を日常的かつ長期的に食べることが必須条件だと考察されました。
味噌の放射線への防御機能は世界的にも知られるようになりましたが、どうせ選ぶなら熟成期間の長いものや杉桶による本醸造ものを選びたいものです。
※参照:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3695331/
(転載おわり)
**********************************
<吉富信長さんの記事より その2>
(転載はじめ)
【発酵食品をすすめる理由と、あらゆる栄養学は参考程度にしておいた方がよい理由】
なぜここまで私が発酵食品をすすめるかを一旦まとめておきます。科学的にも現実的にも文明社会で生活する現代人は腸内細菌叢の多様性がありません。これは微生物の宝庫である土をふさいだコンクリート社会では、仕方のないことではあります。
現在は健康推進のひとつに、分子整合の栄養療法が流行しています。これは確かに短期決戦では効果抜群ですが、私からしてみれば実はまだ本質に近づいていないと見ています。生化学の本もある程度読破してきましたが、表面上の理論であって、これでは最終的にサプリ療法や健康栄養食材への依存でしかなくなることが多いのです。
糖質制限を主体とした栄養療法も、手っ取り早くサプリへの誘導で終わってしまったり、栄養素を重視しすぎたために気づいたら不自然な食生活(その風土では入手できないものなど)になっていたということがよくあります。
健康な民族を追求すると、彼らは経験的に栄養過多な食材を基本的に生活している土地の中で選んで食べてます。しかし、いつもそれが入手できるわけではなく、また食べる量も少ない地域も結構あります。現代のあらゆる全ての栄養学において、一部の民族の粗食、偏った食生活、栄養欠乏食品でも血液検査は異常なしなどの状況を生化学上の理論で説明できるものは意外とありません。
狩猟才能に優れた狩猟採集民であればその狩猟技術であらゆる動物を頻繁に食べることはできるかもしれませんが、私が調べる限りは決してそういった才能をもった民族ばかりでなく、半農半狩のような民族、農耕民族、牧畜民族なども多々おり、さまざまな食性で生活しており、足りていない栄養素があるものの、実際には現代人よりもはるかに健康です。粗食である民族も多いです。もちろん植物性食品の割合が多いところほど虫歯は発生していますが、私たちに比べれば死ぬまで歯は残っています。
腸内細菌層は最近注目され始めていますが、これは間違いのないもので、私たちが体の中にいれた食品の消化や吸収の大きな役割も担っています。このフローラが少ない人(特に最近の子どもたち)は腸の粘膜を守ることができず、さらに消化や吸収にも影響がおよび、便秘になったり、栄養吸収に障害が起きたり、たんぱく質を上手に分解できないためアレルギーやアトピーになったり、低体温になったり、さまざまな異常をきたします。
本来の腸内細菌叢はその土地その土地で全く異なります。例えばアフリカの民族ではいわゆる悪玉菌が優勢している中で健康を維持しています。しかし、コンクリート社会になるとそうはいかず、よく言われているように、善玉菌・日和見菌優勢でないと支障をきたすことでしょう。微生物曝露の機会の少ないコンクリート社会では、(土地にもよりますが)乳酸桿菌やビフィズス菌などが優勢である必要があります。しかし、一転して野生生活を営むとこれらの善玉菌優勢では不健康になるという研究もあります。健康的な先住民族の食生活を参考にはしても、鵜呑みにしない方がいい理由はここにあります。
さて、発酵食品をすすめる理由は腸内環境を整えるというとても重要な意味あいがあります。発酵食品は微生物の宝庫であり、たとえ胃酸にやられた死菌でも効果があり、また習慣化することで胃酸をくぐりぬけた微生物が腸内へと繁殖します。さらに味噌のように発酵食品に食物繊維があれば、これが善玉菌のエサとなり優勢になっていきます。食物繊維は必須栄養素ではありませんので食べなくても生きていけますが、野生生活をしていない私たちの腸内細菌叢では多様性がありませんので、エサである食物繊維を与えることが鍵になります。食物繊維を食べて便秘になる人はかなり腸内細菌叢の多様性がないので、すこしずつ段階的に試していく必要があります。
そのままの大豆製品ではフィチンなどの生物毒がありますが、発酵させれば乳酸桿菌などにより分解されます。また仮に残留農薬があっても微生物により分解され無害化されることがあります。微生物は栄養素を吸収しやすい物質に分解し、さらにビタミンも産生しますので、味噌は総合サプリとしての役割も果たします。
体という土台がしっかりしていなければ、どんなに栄養療法で補給しても燃費が悪いだけです。栄養療法的な食事で土台を形成していくことも大事ですが、それだけではなく微生物曝露、日光浴、山仕事や野生生活のときに使う筋肉部位の負荷、裸足生活、ランニングなどすべての要素を兼ね備えて土台を作ることが肝心なのです。その中にぜひ味噌をはじめとした発酵食品を取り入れてもらいたいものです。
(転載おわり)
(中川式糠漬け 2015.10.25撮影)