中川さんにお料理を教えていただくようになって、
最初に特に印象深かったことがふたつあります。
一つは、中川さんが切ったものの断面がつるっと、ツヤっとしていること。
もう一つは、緑のお野菜の、鮮やかさ。
幸せコース当時はどうしてそうするのか、という理由を教えていただいても
へぇ!そうなんだ~!そういうものなんだ~!と感心するばかりだったのですが、
今年の5月から煮物コースに通うようになって、つくづくその意味と重要度を感じています。
断面の美しさも、緑の鮮やかさも、それがあるとないとでは食感に大きな差があって
それは、単純に切っただけの時点ではそんなにわからないのですが
時間や熱を加えていくごとに差が顕著になってくるものでした。
そして、それが味に、美味しさに直結していました。
(穴子と独活の蛇の目煮 万願寺唐辛子添え)
例えば万願寺の緑が鮮やかな、彩度の高い緑に仕上がるとき
その万願寺はいちばん「活きている」状態なのだと感じています。
ぐみぐみしておらず、自衛隊色にもなっておらず、「美しい」状態だからこその食感。
断面のつるつるもそのためにあるものでした。
また、逆に言うと、「美しい」状態の時に一番おいしい、というお野菜って
偉大だな、とも思います。
「美味しい」ということばには「美」という文字が入っていることは、
目にもおいしい、という意味だけではなく、
「美味しい」のための要素が、「美」にあるのだ、と感じています。
【2016.7.16 舞記】
<マクロ美風より>
私たちは「美味しい」とか「旨い」という言葉を日常的に使いますが、そこには当然のことながら目で見た美しさも含まれますね。
それを陰陽で考えると次のようになりますでしょうか。
「直接感じる味=陽性」、「間接的に感じる味=陰性」。
舞さんが幸せコースの頃に中川さんが切ったり剥いたした物に感じた美しさは、見た目の美しさであって、まだ陰性の段階だったといえます。
(噛む音は聴覚での味覚、香りは嗅覚での味覚、温度や硬さ柔らかさは触覚での味覚であって直接的かつ陽性。色や光沢や形状は視覚の味覚で陰性。)
しかし、秘伝コースを修了して煮物コースに通い始めると、切ったり剥いたりした物の完成度が直接お味に響くことを何回も体験することになって、やっとここで刻んだり剥いたり色鮮やかに仕上げることと味のつながりを陽性レベルで感じられるようになりましたね。
これが中川さんが口を酸っぱくして伝えているお料理の基本です。
そこまでたどり着いてくださって嬉しいです。