他人の胃袋

先日Twitterでこんなことがありました。
何日も自宅を留守にする妻が、夫のためにビーフシチューを作って冷蔵庫に入れておいたけれど、妻が帰宅したらそのままお鍋が冷蔵庫に入っていたというもの。
この妻は仕事上留守にすることが多く、 その時には作りおきをホワイトボードでお知らせすることになっている模様。
帰宅した妻は、忙しいのにせっかく作って行ったシチューがそのまま手つかず状態になっていることに不満を感じる。 
とまあ、こんな話です。
こんなことってどこの家庭にも起こりうる話ですよね。
そしてそれに同情する主婦も多いし、ご主人に文句の一つも言う奥様もいらっしゃるでしょう。
がっかりする作り手の気持ちもよ???く理解出来ます。
でもね、これでは普通の人のレベル。
マクロビオティックを知っている人なら、そこで違った見方が出来るのです。
マクロビオティックを知る前なら、私だって「あ?あ」ってガッカリしました。
でもね、マクロビオティックの考え方を知ると、「あ?あ」ってならないのです。
よく体の声といいますが、具体的に体の声を考えたり感じたことはありますか?
時々自分に都合の良いように、体の声だと言ってスイーツを食べている人は見かけますが(笑)
この体の声を作りおきにも登場させると、物事はすんなり解決します。
つまり、冒頭のご主人はビーフシチューを食べたくない体の声だったと考えるのです。
そうすれば怒りどころか、労りの気持ちすら生まれて来ます。
*   *   *
このようにマクロビオティックの考え方というのは、普通なら怒るような場面であっても、相手を思いやれるところまで気持ちを軟化できる素晴らしい内容をもつものです。
さらにそれは、どんな逆境にあっても、希望や夢を抱くことができるほど強い精神力をも生み出します。
そのことを戦後の貧しい時代に、夢も希望も持てない少年たちのために桜沢如一先生が書いたのが「魔法のメガネ」です。
書かれている時代背景が古いので、今の若者には難解でしょうが、ここで桜沢先生が何を言いたいかをつかみとってくだされば、ビーフシチュー問題も笑って終わらせる事ができます。
人生で怒りたい場面はいっぱい出てきます。
もちろん怒るべき時には怒っても構いませんが、無用な怒りもあります。
人間関係をギクシャクさせることにもなります。
はたまた信用を失うこともあります。
できれば怒ることは少ない方が心が安定して穏やかな日々が訪れます。
マクロビオティックとは玄米を食べて、野菜を食べて、動物性や白砂糖を排除するものと思い込んでいる人は、マクロビオティックの本当の素晴らしさを知らない人です。
いかに凪の精神状態を保てるか。
それでいていかに強い精神力を保てるか。
そんなところがマクロビオティックの醍醐味でもあります。
でも、その醍醐味を楽しんでいない人の何と多いことか・・・。
*   *   *
ところで、他人の胃袋を満足させるのは難しいです。
冒頭のビーフシチューはご主人の好物だったそうですが、好物があればいつも満足かといえばそうでもないのです。
たとえ目の前に好きな食べ物が出てきても食べたくない時もあるのです。
その原因は体調であったり、精神的なことであったりします。
ある時息子にこんなことを言われたことがあります。
「家で一人で食べるんだったら、外で人のいるところで食べたい」と。
私が作っておいたおかずを一人で食べる姿を想像して、ちょっと目頭が熱くなりました。
アトピー体質の息子には外食より家庭でのお食事の方が安心だからと思っても、息子の心理状態はそれらを超えるのです。
そのストレスもまたアトピーを悪化させるので、息子には好きなようにさせました。
今では私の料理とうまくバランスをとって、外食も楽しんでいるようです。
胃袋を満たすのは食べ物だけでなく、心も一緒に食べることを考えると、人間の真の姿や弱さ、そして作り手の傲慢さを思い知ります。
思いどおりに行かないのが人生であり、稀に思いどおりに行ったらラッキーなことです。
常に思いどおりに事を進めようとしていると、まず暗礁に乗り上げること間違いなしです。
お料理を作る者は、つい自分の物差しで作ってしまいがちですが、くれぐれも食べてくれる人のことに想いを馳せて、繊細さと謙虚さを忘れずに作りたいものだと思います。
 

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コメント

  1. じゅんこ より:

    今日も大切なこと、記事にして下さってありがとうございます。
    二年前、夫にパンを買ってきたら「パンだパンだ」と喜んだのを思い出しました。
    今では嘘のように、何を食べても何をしても気にならず、楽になりました。
    凪の精神状態、毎日意識して過ごしたいです。

  2. 麗可 より:

    美風さん、こんにちわ
    昔の自分を思い出しました
    傲慢でした

    お陰様で今は胃腸が疲れているのかな?
    今の体調に合わなかったのかな?
    と思えるようになりました

    義父は若い時に十二指腸の手術をして少食と聞いていました
    うちに来てくれる時は沢山食べてくださるので、義母も夫も私のお料理が美味しいからと言ってくれてました

    もちろんむそう塾に通い出してからお料理は格段に美味しくなったのですが、他にも理由がありました

    義母は食事中、これは美味しいよとか、折角作ったから等と言い続けていたのです

    やはり食事は食べないといけないでは美味しくない、楽しくて美味しいと自然と箸が進むのだと思いました

    色々話をしたら最近義父が残しても何も言わないようにしていると報告がありました

    これからも謙虚な気持ちを忘れずにお料理したいと思います

  3. いずみっち より:

    美風さん こんにちは。

    つい自分の物差しで作ってしましがち=つい自分の物差しでみてしまいがち と今の自分には読みとれました。
    相手のことを想って繊細に謙虚に・・。

  4. erinko より:

    私のことが書かれていてビックリしました!(笑)
    作った方はどうしても「なんでよ~ぅ」となってしまいまして。
    しかもそのビーフシチューを食べずに夫が何を食べていたかというと、レトルトカレーとインスタントラーメンなのです!(むむー!)
    でも元はといえばホワイトボードにビーフシチューを書き忘れた私のせいなので、自分が出かける前に余裕がなかったのが原因だと思います。余裕ある自分でいれればこんなことにならなかったでしょうし、そして食べてくれる人への思いやりや、その人の体調をも考えなくてはいけませんね・・・まだまだです、ハイ。

    話はマクロビと逸れますが、冷蔵庫に関していつも思い出すことがあります。それは以前にテレビで見た、一般的に(あくまで一般的に)男性は冷蔵庫の中にあるものを見つけるのが不得意で(例:わさび、小鉢など)、それに対し女性は得意だというお話です。男性の脳は狩猟にふさわしいようできているため、レーダーのようにものを見るように作られている。そのためレーダーから外れているものは見落としてしまうこともあるそうです。
    一方、女性は子供を守る脳になっているので、危険を察知するために、広く見渡すということが得意とのこと。
    そのためどこの家庭でも「んもう!わさび、目の前にあるじゃない!」的なことが起こりうる・・・のだそうです(笑)
    実家はこれが日常茶飯事でした(笑)

    でもやはり、それぐらいでイラッとしない妻でなくてはいけませんね。いやー、やはりまだまだでございます。精進しなくては。

  5. げんたろう より:

    実はワタシも外食は好きなほうでして
    息子さんが外食を好む理由はよ~く判るつもりです(笑)

    ただワタシ自身、外食にも拘りがあるのである時期は蕎麦三昧かと思えばパスタ三昧、そしてベジタリアン料理がキッカケでインド料理にも凝りましたが、
    最近の外食はインド料理が主で、外食をしない時は自家製のインドカレーにレトルトのアジアンカレー、
    そして地元の野菜をふんだんに使ったパスタ等を食すことが多いのですが、
    自宅で一人で食べる時は何らかの理由がなければやはり寂しく、食べる気にはなりませんね。

    最近では生活のリズムの関係でお昼に蕎麦を食すことが少なくなったのですが、
    年末に食べた蕎麦はやはり旨かったなと思いました。

    ワタシ自身のことで言えば、身体の声をより意識するようになってからはその時、その時の気分次第で何を食べるのかを決めるようになりましたが、
    最近では、身体作りに必要な食材を意識するようになり、自然とそういうものを食すようになりましたし、
    食後の負担が大きい食べ物は避けるようになりました。

    よって冷蔵庫に入っている物が食べたい物とマッチしていればそのままありがたく頂きますが、
    もしマッチしていなければ、その日は別の物を食べますね。

    最近、ワタシが感じることは何を食べればよいか?を感じ取っていない人が意外と多い印象を持っています。

    勿論、これにはある一定の知識が必要かも知れませんし、それだけの勉強が必要かも知れませんが、
    やはり食べ物に対する意識が高くなければそれを感じ取ることは無理なのかな?と思うことが多くなりました。

    相手にそれなりの意識づけがあるかどうかでその辺の感覚に差が出るような気もしますし・・・

    個人的には体調が悪くなったり、気分が乗らなくなったと思える食べ物は避けるようになったと自覚していますが、
    そういう物を我慢して食べていると、身体のリズムに狂いが生じるのかも知れませんね?!

  6. マクロ美風 より:

    じゅんこさん、おはようございます。

    「パンだパンだ」に笑ってしまいました。
    ご主人のお気持ちもよ~く分かるし、じゅんこさんがそう言わせるお食事をしたのもよ~く分かります。
    すべて私も経験したことだからです。
    マクロビオティックをすると、誰もが一度は通る道ですね。

    凪の精神状態、これが最高の贈り物だと思います。

  7. マクロ美風 より:

    麗可さん、おはようございます。

    おお、偉いですね。
    すでに体調を優先する考え方をされているんですね。
    麗可さんは本当に変わられたので、そのように考えられるようになったのだと思います。
    まわりの方々もその影響を受け始めていて、ますます良い方向に行きますね。
    楽しみにしていますよ♪

  8. マクロ美風 より:

    いずみっちさん、こんにちは。

    そうですね~、あなたはつい独走してしまうタイプなんですよね。
    その結果トラブルが発生して、精神状態が良くない時間ができてしまうんです。
    ここが玄米炊飯に及ぼす最大の難点です。
    深い呼吸ができると良いのですが・・・。

  9. マクロ美風 より:

    erinkoさん、こんにちは。

    あら、話のタネにしちゃいました(笑)
    おかしいやら、よくある話なので、記事にしてみたくなったのです。

    男性心理と女性心理は、タイプにもよりますがおおよその分類ができて面白いものです。
    男脳と女脳の違いを取り上げた本もありますが、要は自分と同じように相手は考えてくれないのだから、日常的にそれを踏まえておきましょうということでしょうね。
    上司になったり、他人を使う仕事をするようになると、このことは大きな意味を持ち始めます。

    私もそうですが、お互いに忙しすぎるのがいけませんね~。

  10. マクロ美風 より:

    げんたろうさん、こんにちは。

    息子はまだ外食の楽しみを知っているわけではなく、単に一人ぽっちが嫌だというレベルなのです。
    そしてアトピーのこともあるので、外食では自分の体を守れないことも体験して、少し複雑な心境かと思います。

    私の場合、体の声は最初は難しく感じられましたが、自分の体で体験するととても判りやすくなりました。
    それにはやはり断食が最高だと思いました。
    飽食の今の時代では、なかなか味わえないことですが。。。

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